94年W杯決勝の豪華メンバー集結。
マッサーロ弾でイタリアがリベンジ

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 1994年7月17日アメリカ。パサデナのローズボウル・スタジアムは、9万4200人の観客で埋め尽くされていた。W杯アメリカ大会決勝のブラジル対イタリア戦。ともに優勝回数3回(当時)を数える強豪同士の対決に、スタジアムは熱気に包まれていた。試合は0-0のまま90分が過ぎ、延長戦も経過し、W杯史上初の決勝でのPK戦となった。

 私も記者として、その場に居合わせたひとりだった。お恥ずかしい話だが、私は取材する立場をすっかり忘れて、ブラジルに声援を送っていた。ハラハラするシーンが続き、何度も爪を噛んだ。

 真の記者は、たとえ自国のチームの試合でも、肩入れしてはいけないと思っている。それぞれ応援チームはあっても、記者もテレビクルーも、冷静を保つのが普通だ。しかしあの試合だけは違った。誰もが自分の仕事を忘れ、試合の行方に一喜一憂した。そしてPK戦のイタリアの最後のキッカー、ロベルト・バッジョのシュートがカリフォルニアの青空に向かって飛んだ時、私は飛び上がっていた。あの時の歓喜は今も忘れない。

 あの日のパサデナは暑かった。気温は40度近くあったろう。そして今年の1月9日も、同じくらい暑かった。この日、ブラジル北東部の都市フォルタレーザで、1994年W杯の決勝ブラジル対イタリアの再戦が行なわれた。当時からのサッカーファンならば、思わず手を打って喜びたくなるようなメンバーがそろった。

元ブラジル代表カフー(左)と元イタリア代表フランコ・バレージ元ブラジル代表カフー(左)と元イタリア代表フランコ・バレージ ブラジルはキャプテンのドゥンガこそ欠いたが、ほぼ94年のメンバーがそろった。クラウディオ・タファレル、カフー、マルシオ・サントス、アウダイール、ジョルジーニョ、マウロ・シルヴァ、ジーニョ、マジーニョ、パウロ・セルジオ、ベベート、ロマーリオ、リカルド・ローシャ、ロナウダン、ヴィオラ。また、94年のメンバーではなかったが、ナポリでマラドーナとコンビを組み、日本の柏レイソルでもプレーしたカレッカがサプライズで登場した。

 イタリアもあの日と同じアッズーリのユニホームを着ており、チームを率いるのも94年と同じアリゴ・サッキだった。サッキは73歳になるが、いまだにエレガントだった。

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