バルサ指揮官交代の非情と舞台裏。「新監督シャビ」はこうして消えた (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Agencia EFE/AFLO

 しかし、CLでは1年目はローマに、2年目はリバプールに大逆転で敗退。勝負弱さのほうがクローズアップされるようになった。首脳陣には、スーパーカップでの逆転負けが象徴的に映ったのだろう。

 なにより、バルベルデはチームをアップデートすることができなかった。下部組織であるラ・マシアの選手を登用できていない。ただのひとりも、新たな戦力に定着させられなかった。その結果、かつての小気味よいパス回しは影を潜め、バルサはすっかりバルサらしさを失っている。

 後任として真っ先に白羽の矢が立ったシャビは、バルサの伝統を取り戻すのにうってつけの指揮官だろう。ラ・マシアで育ち、トップチームで司令塔として長くプレー。スペクタクルなパスサッカーを実現し、数々のタイトルを手にした。洞察の深いサッカー論は他の追随を許さず、リーダーシップもある。「ジョゼップ・グアルディオラの再来」と期待される存在だ。

「自分の使命は、いつかバルサを率いること」と、シャビ本人も公言しているように、準備は進めていた。アル・サッドとは、バルサからの監督オファーがあった場合、解除できる契約だった。

 しかしオファーから1日後、シャビは断りを入れた。

 実は2021年に行なわれるバルサの会長選で、シャビはビクトール・フォント候補の"公約監督"としてバルサに戻る手はずになっている。急場しのぎの要請にのって戻るメリットはない。「連覇した監督のバルベルデを追放した」と見られるリスクもある。そもそも、シーズン途中での監督交代は困難を伴う。チーム作りをする時間はない。にもかかわらず、下手を打てば半年で信望を失う。デメリットばかりだ(アル・サッドがカタールの国内カップ決勝に進出し、監督として二つ目のタイトルが目の前にしていたこともあったかもしれない)。

「シャビはバルサの監督を断ってよかったか?」

『マルカ』のアンケートに、9割近い人が「イエス」と答えた。シャビ待望論が根強いからこそ、タイミングが今ではなかった。

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