久保建英は大久保嘉人級の英雄となるか。マジョルカが1部残留へ正念場

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by MB Media/AFLO

 2019-20シーズン、久保建英を擁するマジョルカは、リーガ・エスパニョーラの前半戦最後となるグラナダ戦(1月5日)で1-0と敗れている。

「今シーズンの我々の運命は、"苦しみ"である」

 2020年最初の試合で負けた後、マジョルカの指揮官ビセンテ・モレーノは言葉を絞り出した。

「我々は自分たちがどこにいて、どこから来て、何者なのかをわかっているつもりだ。非常に厳しいカテゴリーを戦っている。我々のメンバーは、(2年前まで)12人が2部B(実質3部)でプレーし、他の選手も多くが2部やそれに等しいチームから来た。現実はそこにあって、甘くはない。しかし最後に"褒美"をもらえるように、全力を尽くすつもりだ」

 マジョルカは、18位で後半戦へ折り返すことになった。リーガは18位以下の3チームが2部に降格する。どうにかこらえてきたが、とうとう危険水域に入ってしまった。

 地中海に浮かぶ島を本拠にするマジョルカは、1部に残留できるのか――。

新年初戦となるグラナダ戦にフル出場した久保建英(マジョルカ)新年初戦となるグラナダ戦にフル出場した久保建英(マジョルカ) 2018-19シーズン、マジョルカは2部で5位となって、プレーオフを勝ち進んで昇格している。理論上は「1部最弱チーム」ということになる。2年前まで2部Bにいた事実を考えれば、1部にいること自体が奇跡と言える。

 その意味で前半戦は"敢闘賞"に値した。

 マジョルカは4-1-4-1のシステムで、分厚い守備陣形を作りながら、攻め手も講じて敵に対抗している。ガーナ代表MFイドリス・ババとクロアチア人FWアンテ・ブディミルのふたりが戦術軸だ。ババはアンカーとして守備で強固なフィルターとなり、ブディミルは1トップとしてポストワークとクロスに対する強さを発揮し、戦いのバランスをとっている。

 これにアクセントをつけていたのが、久保だった。右サイドで起点になり、卓越した技術とスピードで敵を脅かした。そのキックやビジョンは、チーム内では突出している。試合を重ねるなかで、中央に入って間でボールを受け、巧みにプレーメイクをしながら、決定的な仕事ができるようにもなった。空回りすることはあるにせよ、ドリブルは凄みがあり、慌てた相手のファウルを誘い、PKも奪っている。

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