福田正博がリバプール入りの南野拓実の活躍に太鼓判を押す理由 (2ページ目)
リバプールはリーグ優勝18回を誇り、チャンピオンズリーグは前身のヨーロッパチャンピオンズクラブカップ時代を含めて6回制覇している名門だ。ただ、イングランドの最高峰リーグが1992年に現在のプレミアリーグへと移行してからのリーグ優勝はない。
海外サッカーが身近になった2000年以降、2004-05シーズンにCLで優勝したとはいえ、マンチェスター・ユナイテッドやアーセナル、チェルシーの後塵を拝するシーズンが多かった。しかし、2015年にユルゲン・クロップが監督になってからは上昇気流に乗り、昨シーズンはCLで優勝。リーグ戦もわずか1敗で、勝ち点1差の2位。今季はリーグ開幕から好スタートを切って首位を快走。そうした黄金期を迎えようとしているクラブに南野が移籍することに、興奮を覚えないサッカーファンはいないはずだ。
そのリバプールで南野に期待される役割は、攻撃的なポジションのバックアッパーの一番手だろう。4-2-3-1なら日本代表と同じトップ下、4-3-3の場合なら右のモハメド・サラ―、左のサディオ・マネの代わりは、南野の特長には沿わないものの、最前線の中央に張るロベルト・フィルミーノや、中盤の攻撃的なポジションを担うのではないか。
南野はリーグ戦の途中での加入のため、チーム戦術への順応に苦労するのではと不安視する向きもあるが、私はそれに関しては心配していない。
南野が所属したザルツブルクは、ドイツ・ブンデスリーガのライプツィヒ、アメリカMLSのニューヨークなどと同じで、飲料メーカーのレッドブルが展開するRBグループのひとつ。その特長は、サッカー開発部門の責任者であるラルフ・ラングニックを頂点にして、共通の『パワーフットボール』という戦術コンセプトを敷いている。
リバプールはRBグループではないが、チームを率いるクロップ監督がラングニックの影響を大きく受けているため、リバプールもパワーフットボールに近いスタイルを志向している。ちなみに、クロップ監督といえばゲーゲンプレッシングが代名詞だが、この源流を生み出したのもラングニックだ。
こうした背景を踏まえれば、クロップ監督の志向するサッカーと南野がザルツブルクでやってきたサッカーは、大きな部分では共通していると言っていい。まったく違うスタイルのサッカーに順応するには時間がかかるのが常だが、南野のリバプール移籍はこの点で大きなアドバンテージがあると言える。
また、ラングニックのすごさは、戦術だけではなく、彼がいなくてもそれを継続できるための獲得選手像、トレーニングなどのメソッドが作り上げられていることだ。当然ながらクロップ監督もこのメソッドを活用している。
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