シャビ・アロンソが歩み始めた道。
なぜ名将は中盤から生まれるのか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by PRESSE SPORTS/AFLO

 世界のトップクラスの監督の経歴には、ひとつの傾向がある。

<選手時代、中盤でゲームを作る選手だった>

 指揮官として数々のタイトルを勝ち取り、革新的なプレースタイルを提示しているジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)は、その筆頭だろう。「ドリームチーム」と崇められたバルサの司令塔だった。ほかにも枚挙にいとまがない。カルロ・アンチェロッティ(エバートン)、ビセンテ・デル・ボスケ(元レアル・マドリード、元スペイン代表)、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)、アントニオ・コンテ(インテル)、ディディエ・デシャン(フランス代表)など。いずれも世界的なMFとして活躍した後、監督としても栄光に浴している。レアル・マドリードで欧州3連覇を成し遂げたジネディーヌ・ジダンも、それに近い存在だろう。

 言うまでもなくひとつの傾向にすぎないが、現実に、優れたMFから多くの名将が出ている。なぜ中盤の指揮官は、采配を振るう監督としても功を成し遂げられるのか。

「中盤の選手は、チーム全体を動かす仕事をする。当然、ビジョンを持っていないといけない。それが監督になったとき、反映される部分はあるだろう」

 シャビ・アロンソ(38歳)は、中盤出身の指揮官についてこう説明している。

2017年に現役を引退、現在はレアル・ソシエダBの監督を務めるシャビ・アロンソ2017年に現役を引退、現在はレアル・ソシエダBの監督を務めるシャビ・アロンソ「中盤の選手は、試合で起こっていることを、細かいことまですべて把握できるかが重要だ。攻守のつなぎ目を知って、プレーを連結させないといけない。その仕事の積み重ねは、監督としてチームを把握するのに役立つ」

 そう語るシャビ・アロンソ自身、「常勝将軍」として中盤に君臨していた。2017年にスパイクを脱ぎ、指導者に転身。レアル・マドリードのインファンティル(13-14歳のチーム)を率いた後、2019-20シーズンからは生まれ育ったレアル・ソシエダに戻り、2部B(実質3部)リーグに所属するBチームで指揮を執る。

「監督はピッチで起こることを見渡せないといけない。予測も必要になるだろう。中盤の選手というのは、絶え間いないプレーの出し入れの詳細によって、局面が大きく変わることを肌で知っているんだ」

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