南野拓実のリバプールでのポジションは?
「不可欠」になるのに必要なこと

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 ただ、フィルミーノを含む3人のFWはなかなか交代しない。FWは通常、真っ先に交代の対象になるものだが、リバプールは違う。3人はほぼ出ずっぱりだ。大きな試合になればなるほど、その傾向は増す。いまのリバプールはかつて、MSNと呼ばれた3人(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)が前線に並んだバルセロナと似た状態にある。

 当時のバルサは、3人の下でアンドレス・イニエスタやイバン・ラキティッチ、セルヒオ・ブスケッツがしっかり中盤を作っていた。そうした土台の上にMSNの3人は立っていた。

 その少し前の時代、ロナウジーニョ、サミュエル・エトー、メッシが3FWを張っていた時代も、デコやシャビ・エルナンデスが味のあるゲームメークをしていた。その華麗なパスサッカーの屋台骨を、4-3-3のインサイドハーフが支えていた。

 しかし、リバプールの4-3-3は、バルサ型とは毛色が違う。華麗なパスサッカーの匂いはしない。攻撃がバルサより圧倒的に縦に早いのだ。中盤を省略したラフな攻めと言うより、3FWに早く正確にボールを預けようとするサッカーだ。中盤、とりわけインサイドハーフの2人(主としてジェルジニオ・ワナイルダムとジョルダン・ヘンダーソン)は実際、バルサのインサイドハーフに比べ、FWとの関わり方がいたってシンプルだ。特別凝ったプレーはしない。日陰の地味な役に回っている。

 インサイドハーフの存在感は希薄だ。しかしこれは、あくまでもマイボール時に限った話。相手ボールになると一転、2人のインサイドハーフは頼もしい存在に一変する。ボール奪取の主役として活躍する。

 これに3FWも加勢する。プレスバックを仕掛ける。MSNより数段、勤勉に。リバプールは高い位置でボールを奪おうとする狙いがハッキリと見て取れるサッカーをする。

 そしてマイボールに転じるや、2人のインサイドハーフは再び、3FWにサッとボールを預ける。手数を掛けずに、相手ゴールへストレートに向かっていくサッカーを陰で演出する。

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