2019.12.23

コクーとカイト。オランダから
ユーティリティー選手が生まれるワケ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 コクーがPSVに戻ったように、カイトもフェイエノールトへ帰っているのも共通点だ。ともに最も長くプレーしたのはバルセロナ、リバプールのビッグクラブだったが、心のクラブはまた別にあったようだ。

<オランダ育ち>

 フィリップ・コクーは182センチ、ディルク・カイトは183センチ。身長はほぼ同じ、どちらも均整のとれた体型だ。2人ともフィジカル・モンスターではなく、体格も身体能力もプロとしては平均的だった。何でもできるかわりに、何かに特化もしない。いわば潰しがきくタイプで、それが2人のユーティリティー性につながっていたのだろう。

 左利きのコクーは冷静沈着でチームに落ち着きをもたらすタイプ、カイトはアグレッシブに走り回るタイプという違いはあるが、共通項としては「オランダ育ち」であることだ。

 オランダは「平らな国」だ。あの狭い国土から、次々と才能を生み出してきた要因の一つにフィールドの多さがあるかもしれない。至るところに芝生のフィールドがある。しかし、それ以上に決定的なのはロジックがしっかりしているところだろう。どうプレーすべきかのディテールが確立されている。

 そもそもオランダ人は理屈っぽい。固められた論理で育成された選手は画一的といえばそうなのだが、そうでなければ小さな国からあれほどのタレントは輩出できなかったはずだ。国土、人口、国民性に合ったやり方である。

 したがって、天然自然に本能でプレーしているオランダ人選手というのはほぼいない。個人差はあっても、どうプレーすべきについてひととおりの知識があり、いわゆる「フットボールIQ」の高いプレーヤーが多いのだ。また、個人の意見をはっきり言うのもオランダの国民性であり、ときとして彼らのフットボール観がとても頑固であるのもよく知られている。

 どのポジションで何が求められているのか。またそれとは別に、どのポジションであっても共通するプレーの作法が染み付いている。コクーとカイトにとって、新しいポジションに適応するのは、それほど難しくなかったのではないか。