ジダンの選手起用の慧眼と決断のすごさ。
レアルは戦術もバルサを上回る

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ボクシングのように優勢の判定があったら、軍配が上がったのは、レアル・マドリードの方だろう。

 レアル・マドリードは序盤こそ劣勢だったが、10分を過ぎたころから五分に戻し、その後は優勢だった。数字など参考にしかならないが、ほとんどのデータで勝利している。シュート数、枠内シュート数、コーナーキック、パス成功率、ボール奪取数などで、いずれもバルセロナを上回った。特筆すべきは60%以上、バルサ陣内でプレーしていた点だろう。攻守のバランスがよく、前線でのプレスが効いていた。

 あえてマン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、ウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデだろう。

 この試合のバルベルデは、レアル・マドリードという巨大な乗り物を動かす車輪になっていた。中盤で常に優位なポジションを取り、自分のエリアでは目覚ましい強度を見せ、奪ったボールをそのままゴールに運んだ。実際、いくつも際どいミドルシュートを放った。右足ボレーでエリア外から合わせたミドルシュートは出色。後半途中で交代するまで、インサイドハーフとしてプレーを動かし、周りの選手にもアドバンテージを与えていた。

「メッシのマンマーク」

 試合前、バルベルデの役割は「汚れ役」と予想されていたが、その小さな枠にははまらなかった。

 今シーズン、序列の低かったバルベルデを抜擢したジネディーヌ・ジダン監督の慧眼と決断も、あらためて評価されている。

 ジダンはこの一戦で、戦術的に上回った。バルサのサッカーを封じ込め、有効打を当てていた。

「真剣な90分で、いいクラシコだった。足りないのはゴールだけ。結果に関しては、あまり味がしない(よくも悪くもない)ね。選手たちは、勝ちに値するだけの試合をしていたから」

 ジダンはそう言うが、その選手マネジメントはもはや神がかっている。バルベルデの抜擢だけではない。ガレス・ベイル、イスコなど、反目しているように見えた選手も、クラシコでは献身的だった。

 ジダンにとっては5度目のクラシコだが、一度も負けていないのだ。

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