新国立競技場からバルサ本拠地の大改修へ。日本企業の挑戦 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 屋根の上には大きな太陽光発電や集水施設を設置することになるという。芝を育成するための人工照明の電力や芝の撒水、トイレの洗浄水など、屋根の上の施設でまかなおうとしているのだ。

「現在のカンプノウは1階席の勾配が緩いんですが、それを立てて急傾斜にします。そしてその後方の席はスタンド一周、すべてVIP席にします。客席は減らしてボックス席を増やす。スタンドを立てて急傾斜にすると、その下にスペースが生まれます。そこにもビジネスプランに従いVIP用のスペースをつくります」(村尾氏)

「もともと観戦環境がいい2階の客席はほぼそのままで、3階席は増えます。1階席が2万席、2階席が4万席、3階席が4万5000席。完成後には全部で10万5000席になります」(亀井氏)

 3階席にいても近くに感じられるスタジアム。並みいる強敵を抑えてコンペを制した理由のひとつに、傾斜が急な3階席の作りが挙げられるという。

「ファンはできるだけ近くで試合を見たがっていますから」(村尾氏)

 カンプノウ改修計画はスタジアムだけでは終わらず、カンプノウ周辺の再開発も兼ねている。主にバルサBや女子サッカーが使用していた通称ミニ・エスタディを撤廃。練習場にあるヨハン・クライフスタジアムにその機能を移し、その空いたスペースを活用しながら再開発を図る計画だ。

「玉突きに移動して再開発する、都市デザイン開発です。その空き地には、これまでスタジアムの近くにあった体育館やスケート場を移転させます。その空いた場所には、オフィスやホテル、商業施設などを設けながら、公園のようなつくりにします。普段は公園の中を歩いている感じで、吸い込まれるようにバルサストアやミュージアムに入っていく。そこに市民の皆さんのためのスペースをつくっていくのです。緑を多くして、市民が集まりやすい環境にする。いまのカンプノウにはフェンスがあるのですが、そのセキュリティラインの位置が改修によりチケットゲートの近くになり、敷地を公園のように開放できます」(村尾氏)

 その光景はスタジアムの広いコンコースのバルコニーから、見下ろすことができる。

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