2019.12.18

バルサ本拠地大改修の設計を
受注した日本企業。「コンペはCLでした」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 カンプノウという名称の由来は「キャンパスノウ」だとする声もある。バルセロナ大学の敷地の一部だからと言うのである。市民に解放された大学のキャンパスという意味だ。

 スペインがフランコ軍事政権に支配されていた時代、弾圧されていたこの地方の人々が、カタルーニャ語を話すことが許された場所は、モンセラートの山間にある修道院とカンプノウの2カ所に限定されていた。カンプノウはカタルーニャ人にとっての聖地とよく言われるが、オーバーな表現では微塵もない。カンプノウほど高い精神性を内包するスタジアムも珍しい。

 カンプノウの傍らにあるラ・マシア(旧選手寮)の鉄製の門には「FCバルセロナ」ではなく「CFバルセロナ」と刻印されている。CFは「Club de Futbol」。スペイン語の略だ。スペイン語の使用を強要されたフランコ軍事政権時代の歴史的真実がそこに克明に見て取れる。

 その由緒正しきカンプノウにいま、大きな手が加えられようとしている。

 実際、すでに予備工事は開始されている。スタジアムと外部とを結ぶ通路を、工事の車両が入り込める大きさに拡張するトンネル工事や、2階席の下にインナーリングという、どこで工事をしていても電力が落ちないための配管を一周にわたり設置する工事などをすでに終えている。

 工事予算は3億6000万ユーロ(約450億円)。完成予定は2024年だと言う。

 カンプノウの改修計画は過去にも持ち上がっていた。2007年、イギリス人の著名な建築家ノーマン・フォスター氏がコンペに勝利し、いざ始めようとする段でそのプランはお流れになった。今回のコンペはその反省を踏まえ、スペイン以外のインターナショナルな設計者と、地元のアーキテクトとがコンビを組んで応募することが条件になっていた。

 その要綱が発表されたのは2015年6月。コンペに応募してきたのは26チーム案だったという。地元バルセロナの建築家ジョアン・パスカル氏は、友人の息子さんが務める日本の設計会社に連絡を取った。東京・千代田区に本社がある日建設計である。