堂安律がプロ初のヘディングゴール!解任危機の監督を救う (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO



 ファン・ボメル監督も、「怒号も飛び交うような厳しい雰囲気があった」と述懐する。そのなかで若い選手たち(と若い監督)はチーム向上の手応えを掴んだことで、個々のリスペクトも生まれたのだろう。

 フォルトゥナ戦の彼らは相手チームを罵らず、レフェリーの判定にも異議を唱えることなく、チームメイトを励まし合い、黙々と自分たちのプレーにフォーカスし続けた。結果、8分に堂安が先制弾を決めたのを皮切りに、マレン、ステーフェン・ベルフワイン、モハメド・イハターレン、コーディ・ガクポと若きアタッカー陣全員が1ゴールずつ決め、PSVは5−0で快勝した。

「(いい意味で雰囲気の悪い練習があったからこそ)ああやって前半からアグレッシブなプレーができ、(相手チームへの)プレッシャーもすごい迫力だったと思う」(堂安)

「チーム内のピリピリした雰囲気を、チームの外に漏らすことなく振る舞い、サポーターの後押しもあっていい雰囲気でプレーできたのはすばらしかった」(ファン・ボメル監督)

 監督解任の可能性もあったフォルトゥナ戦は、PSVがゴールを重ねるごとにお祭り騒ぎとなり、81分には「PSVの英雄」イブラヒム・アフェレイが大歓声のなか、2年ぶりに公式戦に出場。窮地を脱したファン・ボメル監督には、現役時代と同じチャントが贈られた。それは、かつてPSVのホームスタジアムに漂っていたブラバント地域特有の懐かしく温かな雰囲気だった。

 堂安は開始6分、中盤を組み立てる起点となり、最後は左足でゴール左隅に流し込む会心のシュートを放ったものの、際どい判定でオフサイドを取られた。しかしその2分後、堂安はベルフワインのクロスを頭で合わせ、チームを勢いづける先制ゴールを決めた。

「(オフサイドで取り消された)ゴールの感覚がよくて、『いけそうだな』というのはあった。キャリア初のヘディングゴールでした」

 そう言って堂安は笑った。

「(ヘディングゴールは)プロになってから初めて。小学校の頃は成長が早かったので、ヘディングも得意でジャンプしなくても(競り合いで)勝てた。でも、成長が止まってしまった」

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