久保建英がバルサ戦で証明。グリーズマンと代わってもやれる (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

 データには173cm68kgとあるが、パッと見には、少年の面影を残した華奢な18歳にしか見えない。カンプノウという場の雰囲気も輪をかける。小ささはより強調されるのだ。普通なら後退を余儀なくされる局面に立たされても、久保は怯むどころか、逆に対峙する相手を睨めつけ、果敢にドリブルで突っかけた。周囲のサポートがまるで期待できない中で、である。

 そこに逞しさというか、可能性を見る気がした。相手がファウルでしか止められないシーンもしばしばで、その姿は痛快ですらあった。終盤までその勢いは維持された。後半41分には左サイドからドリブルで仕掛け、深い位置まで進入。対応に出たクレマン・ラングレを簡単に縦に外している。その右足の折り返しこそやや不正確で、GKテア・シュテーゲンに止められたが、最終盤でもチャレンジし、決定的に近いチャンスを作り出すドリブルは高評価に値した。

 繰り返すが、マジョルカには、ほかにこうした個人の力で突破できる選手はいない。久保がひとり抜けた技術を備えた頼りになる選手、相手に名前負けしていない選手であることは、このプレーからも一目瞭然になる。

 マジョルカにとって最大の問題は、必ずしもその久保にボールが集まるわけではないことだ。

 後半、右SBフラン・ゴメスにボールが渡ると、久保は右の高い位置で的確なポジションを取っていた。彼のところにボールが収まれば、明らかにチャンスが拡大すると思われるシーンがあった。ところが、ゴメスはそのボールを真ん中に返してしまった。久保の様子に目を凝らせば、明らかに不満げな様子で、両手を広げ、なぜパスを寄こさないんだと天を仰いだ。

 久保は違った。後半19分、右サイドでボールを受けると、ドリブルで突っかける素振りを見せながら、外を走ったそのフラン・ゴメスを使った。タイミングのいいショートパスを送り、フラン・ゴメスにクロスを上げさせている。それをブディミールが頭で決め、マジョルカの2点目を生んでいるのだが、マジョルカではその逆のケースは拝みにくい状況にある。

 この久保に対する排他的とも言える態度は、シーズン当初はもっと顕著だった。久保がたびたび日本代表に招集され、チームを離れていたこともその理由のひとつかもしれないが、あまりうまくない選手が、明らかにうまい選手を使おうとしない、チーム内に漂うその嫌らしい感じこそが、マジョルカが低迷する理由のひとつに映った。

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