毎週1000キロを母が送り迎え。ジョアン・フェリックスの少年時代 (3ページ目)

  • ジョゼ・カルロス・フレイタス●文 text by Jose Carlos Freitas
  • 竹澤 哲●翻訳 translation by Takezawa Satoshi

 この時の生活についてカルラは次のように話している。

「ポルトにいた時は家から送り迎えをしましたが、さすがにヴィゼウからリスボンまで毎日往復することはできません。ですから週末だけ、私たちは息子に会いに行ったのです。金曜日に会いに行き、ジョアンは2日間をアルマダ(リスボンの対岸にある街のひとつ)で私たちと一緒に過ごしました。そして月曜日の朝に私たちはヴィゼウに戻りました。勤務先の学校には、昼食後に戻っていたのです」

 ベンフィカが彼を温かく迎えたのも、ジョアンにとってはうれしいことであっただろう。ライバルチームであるポルトからやってきたという事実がありながら、彼を冷たく扱う者はいなかった。それどころか、ベンフィカの関係者は誰もが「ポルトガルサッカー界の新しい真珠」とされる彼を、チームの一員に迎えられたことをうれしく感じていたのだった。

 ジョアンを指導したベンフィカの下部組織のコーチたちは、誰もがジョアンの高い資質を評価した。U-17、U-19のカテゴリーのコーチであったジョアン・トラリャオは、ジョアンの優れている点について次のように話している。

「彼のプレーの成熟度はとても印象的だった。試合の流れを読む力。彼の持つ視野はとても広かった。また相手にとって危険な状況を簡単につくり出す力。とくに相手ディフェンス陣の中にスペースを見つけ出す能力はとても高かった。こういったものはすでに大人の選手のものであり、16歳や17歳の少年が持っているものではなかった」

 ジョアン・フェリックスは、ポルトガルサッカー界の数々の記録を樹立してきた。16歳でポルトガル2部の試合に出場し、2部最年少記録を更新した。そして17歳でこのカテゴリーでの最年少得点者となる。2017年には、17歳で年齢別代表では3つも上のカテゴリーある、U-21代表のデビューを飾っている。

 そして2018-19シーズン。18歳のジョアンはついにベンフィカの1部リーグデビューを飾り、センセーショナルな活躍をしていくことになる。

(つづく)

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