2019.12.04

エラシコ、ヒールリフト、ダブルタッチ。
各フェイントの王様は?

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 当時、マヒコのフェイントはスペインで話題になっていたようで、バルセロナの選手たちがマネしようとしたが、ことごとく芝生に転がるだけだったという。そのころバルサにいたマラドーナがマヒコ・ゴンサレスを気に入ってフロントにかけ合い、南米ツアーに参加させたそうだ。マヒコの2ゴールとマラドーナの1ゴールでフルミネンセ(ブラジル)を撃破し、マヒコのバルサ入りは濃厚になった。

 ところが、その夜に敗戦の八つ当たりでフルミネンセのサポーターがバルサの宿泊しているホテルの非常ベルを押した。バルサの選手たちが何ごとかとロビーに集まったが、その中にマヒコの姿が見えない。部屋を確認したら、女性を連れ込んでいたことが発覚。バルサへの移籍は立ち消えになった。

 しかし、マヒコは野心がないタイプの選手だった。相変わらずカディスでマイペースにサッカーと夜遊びの生活を続けていたという。困窮しているホームレスに有り金を全部渡してしまったり、カディスに来たときの格好があまりにもダサいのでファンから服をもらったりと、無頓着伝説にはきりがない。

 おそらくバルサの選手が誰もできなかったというフェイントは、変形のマシューズ型だろう。右足インサイドで左足の前へボールを動かしながら、そのままアウトサイドへ切り替える。まあ、これだけならマネできると思うが、インサイド→アウトサイドの逆エラシコで抜くときにボールを浮かせているのだ。

 インからアウトというより、インで左へ動かしながらツマ先にボールを乗せてヒョイと浮かせている。映像があるのでやっていること自体はわかるのだが、物理的に納得しにくい。まるで手品である。

関連記事