2019.11.28

ドリブルの花形「シザーズ」。
実はJFA会長も名手のひとりだった

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 デニウソンの連続シザーズは、ロビーニョ(06年ドイツW杯、10年南アフリカW杯で活躍、現バシャクシェヒル/トルコ)に引き継がれている。2人とも細身で軽やか。

 逆に重厚型のシザーズではロナウド(94年アメリカW杯メンバー、98年、02年、06年W杯で活躍)に凄みがあった。体が大きいので迫力がある。一瞬で置き去りにするキレも抜群だった。ただ、ロナウドの場合はシザーズなしでもスピードだけで抜けるんじゃないかという疑惑もぬぐえないので、シザーズ王はデニウソンとしたい。

<複合シザーズ王選手権>

 内→外、外→内、2種類のシザーズを組み合わせた複合技。さらに足裏での引き技も組み合わせた、難度の高いフェイントを得意とする選手がいる。

 最近はあまりやらなくなったが、クリスティアーノ・ロナウドは複合技をよく使っていた。キレ味が凄まじく、正直何をしているのかよくわからないぐらいだった。曲芸のようで、C・ロナウドが踊り出したら対面の相手はとりあえず静観するしかない。

 ただ、それで抜くというより、とりあえず相手の動きを止めてからスピードでちぎるために使っていた感じではあった。複雑すぎて対面の相手が止まってしまう。つまりフェイントに反応しないので、それ自体の効果では抜いていないケースが多かった。

 ロナウジーニョ(02年、06年W杯で活躍)は何でもできた。結果的に複合技になっていることがあり、シザーズのキレもスケールも桁違いである。体格は「フェノメノ(怪物)」のロナウドとほとんど変わらず、抜いたあとに相手に体を当てられても、はじき飛ばしてしまうパワーも秘めていた。

 サーカスみたいなロナウド、ロナウジーニョに比べると、同じ複合系でもルイス・フィーゴ(ポルトガル/バルセロナ、レアル・マドリードで活躍)は枯淡の味わい。派手さはないが実質的だった。

 対峙する相手との間合いのとり方、ずらし方がすばらしく、抜き方そのものはほぼ何もしないでスッと抜けていく。シザーズやマシューズ型を複合させるのは相手の体重を操作するためで、抜こうとする瞬間にはもう抜けているといった名人芸だった。すでに相手の体勢が崩れている、「オマエはもう死んでいる」という北斗神拳である。