2019.11.28

ドリブルの花形「シザーズ」。
実はJFA会長も名手のひとりだった

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 相手の心理を読む能力もかなり関係があるだろう。「左足で後方へ(マイナス方向へ)切り返す」と、相手が思い込むような状況で仕掛けないと効果は半減する。「左足で触る」と思って相手が足を伸ばそうとした瞬間に、キレキレの動作で一気に逆を突く。

 リベリーノは1970年メキシコW杯優勝のヒーローのひとりだ。この大会では偉大なペレの陰になった感があるが、ペレがゲームから消えかかるとリベリーノが中盤を仕切ってゲームメークしていた。卓越したボールコントロールは史上最高クラス、左足のキックは強烈かつ正確、さらに多彩。

 標高が高かったメキシコW杯では、CKの時に足を滑らせてしまったのだが、蹴られたボールは逆のコーナーまで飛んでいった。足はそれほど速くないと思うが、瞬間的な1、2歩の速さは図抜けている。典型的な天才肌で、才能でいえば史上最高クラスだろう。

 エラシコ(アウト→インの連続タッチによる切り返し)の発明者ともいわれ、足裏を使った引き技も抜群。技のデパートみたいな名手だった。

<シザーズ王選手権(内→外またぎ)>

 90年代あたりから、内→外またぎのシザーズが一気に一般化した感がある。ブラジルはとくにそうで、多くのアタッカーがシザーズを使いこなしていた。中でも圧巻だったのは左利きのウイング、デニウソン(98年フランスW杯、02年日韓W杯で活躍)だ。W杯途中出場通算11試合という変わった記録の持ち主である。典型的なドリブラーなので、流れを変えたいときに起用されることが多かった。

 デニウソンのシザーズは連続技である。もう、相手がうんざりするぐらいまたぎ続ける。日本の三浦知良も当時は連続シザーズのFWだったが、デニウソンはいつ終わるのかというぐらいすごかった。

 02年日韓W杯準決勝のトルコ戦では、デニウソンの時間稼ぎのドリブルに対して、トルコの選手4人が隙間なく並んだままタッチラインへ逃げていくデニウソンを追いかけていくシーンがあった。そうでもしないと奪える気がしなかったのだろう。