C L強豪対決はドロー。優勢だったレアルが終盤に混乱した要因とは (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 そのマイナスの折り返しパスを受けたイスコがシュートに及び、ボールが左ポストに当たり跳ね返るところをベンゼマがインサイドで仕留める――という展開は、ベンチの狙いが現実化した瞬間だったと思われる。

 この一戦は開幕戦(第1節)のリターンマッチでもある。この時はホームのPSGが3-0で完封している。内容はスコアより競った関係にあったが、レアル・マドリードの状態はこの時より格段によくなっていた。

 アザールがチームに馴染んだことも見逃せないポイントだ。左にいい感じで収まることができている。かつてのアレッサンドロ・デル・ピエロを、さらに滑らかにしたようなその高級な動きが、ベンゼマの動きを楽にさせ、能力を発揮しやすくさせている印象だ。

 後半34分、レアル・マドリードが挙げた2点目は、マルセロのクロスに反応した、そのベンゼマのヘディングシュートだった。起点となったのはその2分前、バルベルデと交代でピッチに入ったモドリッチ。真ん中から右足アウトで浮き球をトップ下付近で構えるイスコに送球。これをイスコがヘディングで流して、マルセロにつなげたわけだが、この得点シーンには逆に危ういムードも潜んでいた。

 バルベルデとモドリッチが交代したことで、イスコとモドリッチが真ん中で縦関係に並ぶことが多くなったからだ。レアル・マドリードの右サイドは、カルバハル1人になっていた。

 少なくともここまでは、スコアこそ2-0ながら、3-0でもよさそうなレアル・マドリードの完全なペースだった。ところが嫌な予感は的中、その完勝ムードは瞬く間に打ち砕かれることになった。その2分後、後半36分、トマ・ムニエのクロスをGKティボー・クルトワトとラファエル・ヴァランがお見合いするような形になり、そのこぼれをキリアン・ムバッペに押し込まれ1点差にされる。

 ジダン監督はまさにその直後、イスコを下げて右ウイングにロドリゴを投入。崩れたバランスを立て直そうとしたが、いったんPSGに傾いた流れは止まらなかった。1点差に詰められた2分後、交代で入ったパブロ・サラビアに、同点弾を叩き込まれてしまう。

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