「倒れないファンタジスタ」オヤルサバルが新生スペイン代表を牽引 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

「左利きで自らボールを運び、フィニッシュもできるが、集団的なプレーで周りを輝かせ、自らも輝ける選手」

 以前、レアル・ソシエダの育成部門を取材したとき、関係者はいずれも「コレクティブな才能」を称賛していた。

 所属クラブのあるバスク地方では、「振る舞い」が重視される。仲間のために戦えるか。その点、オヤルサバルは理想的なキャラクターと言える。チームのために犠牲を払えるし、勝利への責任感も強い。今シーズンは22歳にして、キャプテンを任される。

 3、4年前だったか。トップチームでプレーしていた18歳の彼が、試合の翌日、まだBチーム、Cチームにいる同年代の選手の試合を観戦するため、スタンドに訪れる姿があった。謙虚さを失わず、仲間を大事にする――。それが彼のコミュニケーション力の高さにつながっているのだ。

 ベティス戦でも、左サイドを主戦場にしながら、時間帯によってトップに入り、右サイドにも流れている。ゼロトップとして前線でチャンスメイクしながら、ストライカーのようにも振る舞うことができる。"戦闘中"はいつでもどこでも高い集中力を保ち、必要なプレーに応じられる。特筆すべきは、敵陣左サイドでタッチラインをボールが割った瞬間の判断だろう。素早く反応し、スローインをバックラインの裏に流し込み、決定的なシーンを作った。攻守の境がなく、"笛が鳴るまでプレーできる才能"がある。

 オヤルサバルは、ファンタジスタにありがちな脆さがない。ハイボールに対して前線でディフェンダーと競り合い、勝てる高さもある。ポジションを先にとって、胸でコントロールする技術は白眉。高さだけでなく、速さも十分ある。スプリンターとして、裏をつくプレーも得意とする。

 その昔、レアル・ソシエダでエースを張り、ロシアワールドカップではフランス代表として優勝したアントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)と似た系譜の選手と言えるかもしれない。試合を決めるプレーを、どんな戦術、システムの中でもやってのける。レアル・ソシエダは今シーズン、上位争いを続けるが、勝利への渇望も共通しているだろう。

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