タイサッカーと日本人選手の意外な現状。
元代表でさえ活躍は難しい

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by AP/AFLO

 カセサートはバンコク市内から車で1時間ほどの郊外にある。住まいは30階建てのタワーマンションの24階で、ジムやプールも完備。南部は何よりサッカーに集中できる環境がうれしいという。練習場へは近所に住むブラジル人選手とタクシーに乗り合って向かい、所要時間は20分ほど。ただ、帰りの渋滞がひどいと2時間近くかかることもあり、そんなときはバイクタクシーを使って帰宅するそうだ。

 JFLと比べて、ピッチ内外でルーズなところはあるものの、毎日は充実している。

「まだ自分は来て日が浅いですが、タイのレベルは低いとは思わないし、ブラジル人を中心にいい外国人選手も多い。来季はどうなるかわからないけど、とにかくまずはT1のチームへ行くこと。T1で活躍すれば、日本に戻ってJ1でプレーできる可能性だってあるかもしれない。サッカーをやっている以上、たとえ1試合でもA代表の試合に出たいというのが僕の目標です」

 近年の急激な経済成長とともに、タイのサッカー事情もここ数年で大きく変わりつつある。代表チームの人気が上がる一方で、国内リーグが低迷期を迎えているという話は、Jリーグ開幕バブルが去ったあとの日本に似ていると言えなくもない。ただ、どんな状況になっても、夢や可能性を追い求めてボールを蹴り続けている選手がいる。そんな日本人選手がいることは忘れずにいたい。


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