2019.11.13

ドリブル王選手権! アウトサイドで抜く
メッシ以上の名手がいた

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Press Association/AFLO

 しかもメッシは、歩幅と走るリズムを微妙に変えられる。とても微妙なのでスローで見てもよくわからないぐらいなのだが、例えば左へ斜行しながら右足を踏み込む。この右足の踏み込みで相手DFはシュートを予測してブロックの体勢に入るのだが、するとメッシは次の左足の運びが通常の半分ぐらいの歩幅になるのだ。

 そしてそのまま通過。つまり、一種のキックフェイントなのだが、蹴る動作そのものはしていない。ちょっと歩幅が違うだけだ。ただ、これをやられると相手DF側は全く止めるチャンスがないまま、メッシに目の前を素通りされてしまう。

 2人、3人とシュートコースを防ぎに行きながら、結局最後は打たれてしまう。メッシの斜行ドリブルの途中で、相手DFがバタバタと倒れてしまうのは、シュートブロックしようとブレーキをかけたのにそのまま通過されるので、再び追いつこうとして足がもつれてしまうケースが多いからだ。

 ボールを突いてスプリントするドリブルではないので、ガリンシャのような単純な速さはない。そのかわりボールが常に足元にあって、リズムの変化がある。例えば、最初に右足を踏み込んで左足のアウトで触るときに、メッシは右足を踏み換えているときがある。左足を着地させないまま、右足だけで二度地面を踏んでいるのだ。体を支える右足が強いので、左足をより自由に使えるのだろう。
(※注 メッシと似たカットインをするアリエン・ロッベンは、別のタイプとして次回以降に登場します)

<バカ型マシューズ>

 ブラジルで「バカ」のドリブルというのがある。バカとは牛の意味。バカのドリブルとは、例えば右側にボールを突いておいて自分は対峙する相手DFの左側を抜けていく、「裏街道」などと呼ばれている形のドリブルだ。なぜこれが「牛」なのかはよくわからないが、これのマシューズ・バージョンもある。

 右足のアウトサイドでボールを右へ運び、自分は左へ体を運ぶ。そのまま相手DFの左側を通過すればバカ・ドリブルだが、もう一度右へ体を運んでボールに追いつくという、なかなか手の込んだドリブルである。