CB2人退場のアヤックス。ラスト十数分で見せた攻撃サッカーの神髄 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 その時のメンバーから中心選手のマタイス・デリフト(オランダ代表)とフレンキー・デ・ヨング(オランダ代表)の2人を、それぞれユベントスとバルセロナに引き抜かれた今季はどうなのか。オランダの伝統チームの域にあえなく逆戻りしてしまうのかと心配された、

 しかし、損失はその2人だけで済んだ格好だ。前述のプロメスに加え、リサンドロ・マルティネス(アルゼンチン代表)、エドソン・アルバレス(メキシコ代表)と有力選手を獲得。チェルシーと戦ったホーム戦では惜敗したが、もうひとつのライバルチームであるバレンシアにはアウェーで0-3の勝利を収めており、第3節を終えた段階で、H組の首位に立っていた。

 チェルシーも一時期の勢いは失われたとはいえ実力派だ。ブラジル出身のイタリア代表、ジョルジーニョ、イングランドサッカー界期待の若手、メイソン・マウントなど、勢いのある好選手で固められている。だが、このチームの一番の注目は、なんといっても、監督歴2年目のフランク・ランパードになる。ダービー・カウンティの監督を経て、今季からチェルシーの監督に就任した、CL出場105回を誇る元名MFだ。

 チェルシーの監督と言えばジョゼ・モウリーニョのイメージが強いせいか、手堅い、どちらかと言えば守備的チームを連想するが、ランパードは決してそうではない。正統派の今日的サッカーを展開する。

 だからこそ、アヤックスに対していきなり4失点を喫してしまったという見方もできるが、4点目を奪われるとサッカーは一変。ホーム戦の意地も手伝いハイプレスから反撃を開始した。

 後半18分、セサル・アスピリクエタ(スペイン代表)が押し込み2-4、そして後半26分にはPKをゲットし、3-4とする。だが、このプレーには大きな判定が紐づいていた。アヤックスは、タックルに及んだダレイ・ブリントと、シュートを手に当てたジョエル・フェルトマンが、同時に2枚目のイエローで退場処分に課せられたのだ。

 一度にセンターバック(CB)2枚を失い9人になったアヤックスに対し、チェルシーは容赦なく攻め立て、その3分後(後半29分)、試合を4ー4とする同点弾をイングランド期待の若手リース・ジェームズが叩き込んだ。

 チェルシーの勢いは止まらない。後半33分、アスピリクエタがこの日2点目となるゴールを押し込んだ。5-4。逆転なったかに見えたその瞬間、VARが入って判定はノーゴールとなった。

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