世界最高MFの転身。シャビ・アロンソに
聞く「一番影響を受けた監督」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Agencia EFE/AFLO

「世界最高のMF」

 シャビ・アロンソ(37歳)は、そんな称号がふさわしい選手だったと言えるだろう。

 レアル・ソシエダでプロデビューすると、2002-03シーズンには"銀河系軍団"レアル・マドリードと一騎打ちを演じる(最終的にはレアル・マドリードに次いでリーグ2位でフィニッシュ)立役者となった。移籍したリバプールでは、2004-05シーズンにUEFAチャンピオンズリーグで優勝。2009年に移籍したレアル・マドリードでも、2013-14シーズンに欧州王者になっている。その後、バイエルンでは3年連続ドイツ王者に輝いた。

 その間、2008年ユーロ、2010年南アフリカW杯、2012年ユーロでも、スペイン代表として頂点に立っている。

「常勝将軍」

 そう呼ばれたのは2017年に引退するまで、所属したチームをことごとく勝利に導いた功績によるものだ。

 そのシャビ・アロンソが、監督人生をスタートさせた。

今季からレアル・ソシエダBを指揮するシャビ・アロンソ今季からレアル・ソシエダBを指揮するシャビ・アロンソ 10月、スビエタ。サンセバスチャンの郊外にあるレアル・ソシエダの練習場は、朝の眩しい光に照らされていた。山を切り崩し、何層かにピッチが作られている。その中腹にある練習場に、シャビ・アロンソはいた。

 現役時代と変わらない体型だった。顔は小さく、髭が似合い、細身に見えるが筋骨は隆々。いまでもボール回しに混ざると、誰よりもうまい。

「サンセ」

 地元ではそう親しまれるレアル・ソシエダのBチームの指揮を、シャビ・アロンソは今シーズンから取っている。前日のリーグ(リーガ・エスパニョーラ2部B)戦で敗れ、5位に後退したが、2部昇格を争う。若い選手たちの士気は高い。

「オンド!」

 ボール回しをする若い選手たちの背中を押すように、シャビ・アロンソはバスク語で「いいぞ!」と声をかけた。「シーゲ!」(続けろ)とスペイン語も混ざる。活気が漲(みなぎ)る。練習の合間も選手は壁に向かってボールを蹴り、反復することでフォームを固め、濃密な時間を過ごしていた。

 そう言えば、ユース年代までのシャビ・アロンソは、強いキックを習得するため、練習後も壁にボールを蹴っていた。その壁は今や伝説になっている。灯りを消すことができないため、施設管理者がうんざりするほど基本練習を積み重ねたことが、世界最高のキックを産んだのだ。

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