板倉滉、昨季出場ゼロ→先発奪取。冨安健洋とダブる成長のステップ (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 冨安の場合、監督が交代したことで道が拓けた。だが、板倉に関しては、昨季使わなかった監督と今季板倉を重宝している監督は同一人物である。

 バイス監督の板倉を見る目を変えたのは、何だったのだろうか。先日、板倉はこんな話をしてくれた。

「昨季はシーズン途中からフローニンゲンに入ったということもあるかもしれませんが、なかなか監督とコミュニケーションが取れてなかったし、使ってくれる気配もありませんでした。監督はガツガツ行くタイプのディフェンダーが好きなので、練習から味方を削るぐらいやりました。そこで喧嘩にもなりましたが、そういうのがあったから監督も認めてくれたと、自分でも感じています」

 今季のフローニンゲンは、10試合のうち5回もクリーンシートを記録している。これは、AZの6回に次ぐ数字だ。

 GKセルジオ・パットのファインセーブに救われたこともあるが、前線の選手たちの守備意識の高さも見逃せない。90分間、集中力を切らさず守っているからこそ、相手をゼロに抑えることができている。ボールポゼッション時には難のあるフローニンゲンだが、守備に関してはかなり固まったと見ていいだろう。

 私は今季一度だけ、フローニンゲンゴール裏のカメラマン席から試合を見る機会があった。板倉との距離は近かったものの、大歓声のなか、彼が何を話しているのかは聞こえなかった。それでも、常に口を動かし、味方とコミュニケーションを取ったり指示を出したりする様は、よく観察することができた。

「試合中はずっとしゃべっています。通じているかはわからないですし、たまに日本語で言っている時もあるんですけど(笑)。でも、しゃべることが大事。言っていることは『右』とか『左』とか単純な言葉ですが、そのひと声がないと命取りになったりするので、思ったことは全部言うようにしています」

 だが、板倉にとってはクリーンシートを達成した試合よりも、3失点したPSV戦、2失点したアヤックス戦のほうが貴重な経験を積めたのではないだろうか。

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