久保建英にいま必要なこと。レアル戦では「焦り」が見え隠れした (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

 しかし、心配はいらないと決めきっていいものだろうか。「多くの選手は、1試合ぐらいはスタメンで出られない」と言うことは、久保がレアル・マドリード戦のスタメンを外れることを承知のうえで彼を招集したことになる。今日の日本代表監督として、それは適切なのだろうか。

 タジキスタン戦。残り3分となった段で出場した久保は、他のアタッカーとは段違いの高級感溢れるプレーを見せつけた。日本代表史上最高とも言うべきテクニカルかつスキルフルなプレーを見せた。この選手をいかにしたらいま以上の選手に伸ばすことができるか。世界的選手に成長させることができるか。日本代表監督が熟慮すべき重要なテーマだと言えるが、森保監督はレアル・マドリード戦のスタメンを外されても仕方がないと考えた。ミスジャッジだと言いたくなる。

 久保の技量はマジョルカでも群を抜いている。普通の監督なら、久保がレアル・マドリード戦の直前に戻ってきたとしても先発で起用しているに違いない。しかし、ビセンテ・モレノ監督は違った。久保のコンディションが実際、どれほどのものだったか知る由もないが、「まず相手ボールを奪う」という思考法で試合を考えれば、久保の優先順位は確かに落ちる。リーグ屈指の強者に対して手堅い作戦をとるならば、交代出場という判断も腑に落ちる。

 スペイン的でないというか、マジョルカのサッカーは確かに堅い。うまさはないが規律はある。相手ボールの時に強さを発揮する、大崩れしないサッカーだ。一方、攻撃はいたってシンプル。それで3勝1分5敗と踏ん張っている。

 3部、2部を1シーズンで通過。モレノ監督は就任3シーズン目でマジョルカを1部に昇格させ、そしてホームでレアル・マドリードを撃破した。評価は上がるばかりだろう。そういうチームに久保が溶け込めているのかと言えば、懐疑的にならざるを得ない。レアル・マドリード戦でもなかなかパスが回ってこないのだ。それはこの日に限った話ではない。

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