イブラヒモビッチが貫く俺様道。「王のように来て、伝説として去る」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

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「人の10倍もうまくやれることは感じていても、俺は努力を怠らない」

 個人練習を欠かさなかったというカントナとは、このあたりも共通項だ。

 運、努力、才能――ズラタンは端的に成功の要素を3つ挙げている。才能は「笑いが止まらない」ほどあった。努力も怠らなかった。運については達観している。

「何にしろ起こることが起こる。それは運命で、俺が今あるようにあるのも運命だが、それについては何の後悔もないよ」

ユベントスで魔改造

 マルメからアヤックスに移籍して頭角を表わした。ただ、この時のズラタンはまだ後のズラタンではない。196cmの長身、半身になってキープするときに相手の足の間に左足を差し込むと、相手がズラタンの左足に乗っかってしまうこともあった。強靱さは図抜けていたが、アヤックス時代の印象はむしろテクニシャンだ。

 バレリーナのように足を伸ばして空中にあるボールをインステップに乗せ、一瞬静止してからパトリック・ビエラの頭上を越して抜いていくのを見た時は唖然とした。底知れない才能、掘ってみればまだまだ何かが出てきそうな埋蔵量だったが、まだ全容は明らかになっていなかった。言い方を変えると、アヤックス時代は未完成だった。

 魔改造されたのがユベントス時代だ。ファビオ・カペッロ監督の要求によって、得点に専念するゴールマシーンへと変貌する。89キロだった体重は98キロに増えた。ファン・バステン2世として『華麗なアタッカー』になるはずだったズラタンは、『怪物』になった。

 テコンドーで鍛えた足腰の柔軟さは驚異的。後ろ回し蹴りのようなアウトサイドで叩き込むボレーは独特だ。もともと長身で空中戦が無類に強いのに、わざわざファーポストで待機して、背の低い相手サイドバックとマッチアップする狡猾さも持ち合わせる。

 ボールタッチの巧みさ、瞬間的な速さはアヤックス時代そのまま。ユベントスとインテルでタイトルを獲り、彼にとって本来いるべき場所だったバルセロナへ移籍する。

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