オランダサッカー復権の予感。2020年ユーロ出場に向けて大きく前進 (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 オランダが打ったシュートは21本。対する北アイルランドはわずか2本だから、オランダの順当勝ちであることに間違いない。試合後、北アイルランドのマイケル・オニール監督は途中出場した敵陣選手の名前を挙げながら、「3人ともトッププレーヤーだった」とオランダの選手層の厚さに舌を巻いた。

 だが、実際には20代半ばから30代の選手が多数を占める北アイルランドの老獪なサッカーに、オランダは押し切られそうだった。それでも不振のデパイが起死回生のゴールで1−1にすると、オランダはアディショナルタイムに2点を追加して勝負を決めた。

 これまで逆転で勝利してきた成功体験の積み重ねが、オランダを最後まであきらめないチームに変えたのだろう。結果、今季不振の選手たちは、代表チームでかつての自分を思い出したようだ。

 たとえば、L・デ・ヨングの逆転ゴールは他のストライカーがマネのできないものだ。左サイドからのクロスがファーに流れてくると、長いリーチを伸ばしてゴールラインのギリギリのところで足に当て、ボールが宙に浮いたところを再度押し込んでのゴールだった。

 初めて彼のプレーを見た人は、このゴールを偶然だと思うかもしれない。だが、私は「彼らしいセンスが現れたゴールだ」と感じている。これがL・デ・ヨングにとって、うれしい今季初ゴール。このフィーリングをセビージャに持ち帰って、ゴール量産につなげてほしい。

 2016年のユーロ、2018年のワールドカップと、ビッグイベントを2度逃したオランダにとって、北アイルランドに2点差をつけて勝ったのは大きい。2020年ユーロ予選のグループCでは現在、北アイルランドが1試合多いものの、オランダはドイツ、北アイルランドと勝ち点12で並んでいる。

 UEFA主催大会では勝ち点で並んだ場合、当該国同士の対戦成績で順位が決まる。オランダはドイツに対して1勝1敗だが、両チーム同士の得失点差で優位に立っている。11月に行なわれるアウェーでの北アイルランド戦では、仮に負けたとしても1点差で収めたいところだ。

「個の力」「サッカーの質」ではオランダが北アイルランドを上回っているのは間違いない。だが、あらためてスタジアムで感じたのは、北アイルランドが骨太のサッカーをするチームである、ということだ。ベルファストで開催される北アイルランドvsオランダは死闘になりそうな予感しかない。

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