2019.10.10

王様・カントナ、「カンフーキック」事件
の名言。練習相手はベッカム

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 自分を何かに見せかける。だが、これは最もカントナがやりそうにないことでもある。少なくとも、人々に迎合して世の中をうまく渡るために自らを偽っていたとは思えない。むしろ進んで孤立し、世間に反発し、人には理解できない自分だけのルールに従って行動しているように見えた。「俺はいいけど、カントナは何と言うかな」と自らに問い続けていたのかもしれない。

 ヨハン・クライフは選手としてピークにあったカントナを「何も特別ではないが、すべてを持っている」と評していた。プレーヤーとしては器用なのだが、人としては不器用で、謎の石のように神秘的。キャリアの前半では類い希な才能を浪費し、後半では栄光を極めた。ただ、カントナ自身が何か変わったわけではない。およそそのままだった。

 そして、誰も理解できなかったが、理解されないまま愛されていた。

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