王様・カントナ、「カンフーキック」事件の名言。練習相手はベッカム (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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 もしここでキャリアを終えていたら、才能に恵まれながら感情を抑えきれない理解不能の暴力男として記憶されただけだったろう。しかし、カントナを高く買っていたミッシェル・プラティニ(当時のフランス代表監督)がイングランドに売り込み、最終的にリーズ・ユナイテッドに移籍した。イングランド行きは、当時代表コーチだったジェラール・ウリエが心理学者に相談した結果だそうだ。心理学者は正しかった。

 リーズではリーグ優勝に貢献、翌年のシーズン途中でマンチェスター・ユナイテッドへ移籍、エリック・カントナはそこで「キング」になる。

金を払う価値のある練習

 マンチェスター・ユナイテッドには、サンフレッチェ広島の選手たちが短期間だが練習に参加していた。高木琢也(現大宮アルディージャ監督)もその1人だったが、カントナについて、次のように話していた。

「孤高というか、いつも1人だった。練習試合で足を蹴られると、試合中ずっとその選手を目で追っていたのが恐かった」

 子ども時代を暮らしたマルセイユの家は洞穴。サルデーニャからの移民で、祖父にあたる石工士ジョセフが見つけた場所だという。第二次世界大戦末期にドイツ兵を見張るために丘に掘られたものだそうだ。カントナは「自分の墓として何も刻まれていない石を置いて欲しい。永遠に謎の存在として」と言っていたが、すでにその存在は謎めいている。

 マンチェスター・ユナイテッドに来たカントナについて、当時のキャプテンだったポール・インスの第一印象は、

「『俺はエリック。お前らにタイトルを獲らせるためにここに来た』と言っているようなオーラがあった」

 チームメートが移動のバスの中でトランプやゲームに興じているときも、1人で本を読んでいた。勉強が好きなのかと問われると、

「学んでいるんじゃない。生きているんだ」(カントナ)

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