「スター誕生」。欧州王者を苦しめたザルツブルクに南野拓実あり (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 ワイドエリアの足りない人員は、中盤「3」の位置にするサイドMFが補完。さらに、頻繁に中盤まで下りてきてパスを受けていたリバプールのCFロベルト・フィルミーノに対しても、アンカーのズラトコ・ユヌゾビッチがケアした。守備の役割分担をはっきりとさせ、構造上の守備の穴をふさいだことで、反撃の土台ができあがったのだ。

 一方、南野はトップ下に移動した。日本代表MFはよりゴールに近い位置でプレーしはじめ、ペナルティエリア付近での危険なプレーが増えた。システム変更直後には、南野がDFラインの背後に抜け出してスルーパスからシュート。その8分後には、南野の縦パスからFWパトソン・ダカがシュートまで持ち込んだ。システム変更で、ザルツブルクと南野は息を吹き返したのである。

 日本代表MFのゴールは、そんな状況下で生まれた。リスタートからFWファン・ヒチャンが左サイドのスペースへ抜け出すと、南野は右手を挙げてクロスボールを要求しながらペナルティエリア内へ突進。クロスボールに右足のダイレクトボレーであわせてネットを揺らした。

 得点後、南野はゴール裏に陣取るサポーターを両手であおり、さらに自陣に戻ってもDF陣に向かって「行くぞ」とジェスチャーで鼓舞していた。ここから、ザルツブルクの寄せとプレースピードは一気に速くなる。

 南野のアシストは、ゴールの4分後に生まれた。右サイドから突破し、速い弾道のクロスボールを供給。質の高いクロスボールに、19歳の新星FWアーリング・ハーランドはゴールに押し込むだけでよかった。

 いずれのゴールも、チャンスと見るやフリースペースにうまく侵入する南野の「読みのよさ」と、正確なキックで得点に結びつけた「技術の高さ」が光った格好だ。

 そんなゴール直結の決定的な仕事に加え、守備面の貢献度も高かった。危険と見れば、自陣のペナルティエリア付近まで戻ってディフェンスに疾走。スライディングタックルでモハメド・サラーからボールを奪ったり、システム変更後に対峙したファビーニョを抑えたりと、豊富な運動量を生かして守備でもピッチを走りまわった。

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