2019.10.03

黄金世代の天才、ルイ・コスタ。
ポルトガルの太陽の周囲はいつも晴れ

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 開幕戦の先発は新聞各紙の予想どおりだったが、ハーフタイムに2人代えた。その1人はルイ・コスタだった。出来が悪かったわけではない。悪かったといえばチーム全体のほうが酷かった。プレッシャーに負けてしまっていた。落ち着いていたのはフィーゴとルイ・コスタぐらいで、この2人だけが何とか立て直そうと懸命にプレーしていた。

 そのルイ・コスタを代えた。交代したのはポルトの司令塔デコ。そして1-2で開幕戦を落とすと、次のロシア戦で半分ぐらいメンバーが変わった。そこにはポルトの面々が並んでいた。

 たぶん、フェリポンは開幕戦に勢いがほしかったのだ。メディアに妙に迎合的だったのも、世論を味方にしたかったのだろう。新聞各紙の開幕先発予想が全部同じだったのも奇妙だった。

 つまり、こういうことだ。ポルトガルで唯一の100万都市であるリスボン、その人気クラブであるベンフィカ。ポルトも強豪だがファンの数が違う。だから新聞はベンフィカの選手を予想布陣に並べた。一方、百戦錬磨のフェリポンは国民の熱狂的な応援が、ポルトガルにタイトルを獲らせるために必要不可欠と考えていた。しかしポルトガル人はおとなしすぎる。本当はポルト勢を起用したかったのだが、開幕戦で勢いを味方にしたかったのだ。しかしそれが裏目に出たとわかると、あっさりとルイ・コスタからデコに代え、2戦目からポルト仕様に変えた。手段は選ばない。

 ブラジルから帰化したデコは、この大会後にバルセロナ、チェルシーで活躍した名手だが、ルイ・コスタが劣っていたとは思わない。ポルトガルの象徴であるルイ・コスタのポジションが危ういという報道は、大会前から出ていた。デコの実力は認めていても、正直そこは手をつけてほしくないと多くのポルトガル人は思っていたようだ。だが──。

「チームのために何でもやるぜ」

 ルイ・コスタは明快に宣言していた。ロシア戦では交代出場してゴール、準々決勝のイングランド戦でも交代出場で延長に決めている。少し弱気なポルトガルの人々は、チームとルイ・コスタに勇気をもらった。今度は返す番だった。