リーガ首位ビルバオの強さの秘密。「足りないことが武器になる」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文章 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 かつてマルセロ・ビエルサ監督は、ビルバオでマンマーク戦術を実現させ、戦闘的なスタイルで旋風を巻き起こした(ヨーロッパリーグ、スペイン国王杯決勝進出)。それは、バスク人特有の屈強さのおかげだろう。1対1で負けない。自分の持ち場を守る責任感は出色だ。

「仲間を思い、チームのために、己の力を使い尽くせるか」

 それがレサマの信条である。行動規範が重んじられ、絆によってお互いの力を高めるのだ。

 その"アスレティック魂"を象徴するのが、バルサ戦でも見事なボレーで決勝のゴールを決めたアドゥリスだろう。

「アドゥリスは自分の雑なクロスを、感謝してくれた。でも、本当にすごいのは、明らかに彼だよ」

 アシストしたアンデル・カパは、そう明かしている。

 38歳になるアドゥリスは、質実剛健のストライカーである。決して派手な存在ではない。しかし実直にプレーを続け、プロフェッショナルな姿勢は鑑とされる。20代で1度スペイン代表に選ばれたあとは外れていたが、35歳で復帰し、EURO2016にも出場。ヨーロッパリーグでは2度の得点王に輝いた。たゆまぬトレーニングのおかげで、体幹、跳躍力、動体視力は抜きん出ており、アクロバティックなシュートも打てるのだ。

 アドゥリスは今シーズン限りの引退を公表しているが、その背中を追う選手たちも育っている。

 FWイニャキ・ウィリアムスは、そのひとりだろう。絶対的なスプリント力とテクニックを併せ持ち、ポテンシャルはリーグでも屈指。アドゥリスと同じピッチに立つことで、したたかな駆け引きも身につけられるか。

 チームリーダーと言えるのが、現在チーム最多3得点のFWラウル・ガルシアだろう。「空飛ぶ牛」とも形容される豪快なプレーでチーム全体を鼓舞し、前線の起点となれる。セットプレーの破壊力も満点だ。

「プレシーズンから、悪くない感触があった。その感覚のまま、いいプレーを見せられている。すばらしい1年になる予感はあるよ。本拠地サン・マメスで、アスレティックは"命"を与えられるしね」

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