チェルシーに補強禁止も何のその。若手台頭で「災い転じて福となす」 (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 そんな新生チェルシーで目につくのが、躍動感あふれる若手選手である。補強禁止処分により、それまでレンタル移籍でチェルシーを離れていた若手を呼び戻し、ランパード監督は積極的に彼らを起用している。とくに、FWタミー・エイブラハム(21歳)やMFメイソン・マウント(20歳)、DFフィカヨ・トモリ(21歳)など下部組織出身の若手の台頭が目覚ましい。

 昨シーズンに在籍したアストンビラ(当時英2部)でリーグ2位の25ゴールを叩き出したエイブラハムは、クラブの1部昇格に大きく貢献。チェルシーでもリーグ第6節まで7ゴールと好調だ。

 194cmの長身を生かしながら柔らかいボールタッチのプレースタイルは、2006年から2009年までアーセナルに在籍したエマニュエル・アデバヨール(現カイセリスポル)とも重なる。ペナルティエリアで勝負強さを発揮しており、フランス代表FWオリビエ・ジルーをベンチに追いやって、早くもエースの座に君臨している。

 チェルシーに6歳で加入したマウントは、昨シーズンのレンタル先であるダービー・カウンティでランパード監督の薫陶をひと足早く受けた。全体練習後に、指揮官とマンツーマンでペナルティエリア内へ侵入するタイミングやフィニッシュワークなどのトレーニングに励み、MFとしてひと回りもふた回りも成長。イングランド代表でも9月に行なわれた欧州選手権予選で初キャップを刻み、成長の階段を着実に上っている。

 マウントと同じく、トモリも昨シーズンはレンタルでダービー・カウンティに在籍し、ランパードの指導を受けた。今年5月に行なわれたチャンピオンシップ(英2部)プレーオフの対アストンビラ戦で、筆者が最も印象に残ったのは、このトモリだった。CBながら足技に優れ、ロングフィードも正確。裏を取られても素早くカバーに入るスピードと俊敏性があり、リバプール戦でもモハメド・サラーを上手に抑えていた。

 さらに、アキレス腱断裂で離脱中のイングランド代表MFカラム・ハドソン=オドイ(18歳)や、将来性の高い右SBリース・ジェームズ(19歳)など、チェルシーにはユース出身の若手有望株が実に多い。彼らとしても、補強禁止処分で広がったファーストチームの出場チャンスを生かし、選手として飛躍したいところだ。

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