ネイマールに待ち受けるパリでの逆境。
セレソンで得点も立場は厳しい

  • 沢田啓明●文 text by Sawada Hiroaki
  • photo by Shaun Clark/Getty Images

 心配なのは、身体よりも精神面のコンディションだ。

 切望していたバルセロナへの復帰が9月2日の移籍期間終了までに実現せず、心ならずもパリ・サンジェルマン残留を強いられた。これについて、本人はノーコメントを貫いている。

 一方、ネイマールの代理人を務める父親は、「バルセロナで息子はとても幸せだった。幸福を感じられる場所へ戻れるよう、我々はできることをすべてやった。しかし、違約金が設定されていない(パリ・サンジェルマンの)契約に跳ね返された」と嘆きながらも、「近い将来にバルセロナへ戻る可能性がなくなったわけではない」とも語っている。

 とはいえ、「バルセロナでそれほど幸せだったのなら、なぜクラブとサポーターの猛反対を押し切って自ら退団したのか」というのは、誰もが抱く疑問だろう。

 2017年8月にパリへ移籍した当時、その理由について本人は「クラブの壮大なプロジェクトに賛同したから」と言い張った。実際のところは、バルセロナにいたら偉大なリオネル・メッシの陰に隠れていつまでたっても世界一の選手になれないこと、また移籍によって代理人の父親ともども巨額の収入を得ること、の両方だろうと誰もが受け止めた。

 9月の代表2連戦でのプレー内容は、率直に言って物足りなかった。しかし、これは来年3月に始まる2022年ワールドカップ南米予選への準備の一環にすぎない。セレソンは、今年のコパ・アメリカを制覇する過程を通じて、すでにチームの土台ができている。コパ・アメリカを欠場したネイマールにしても、当面、レギュラーの座は揺るがないだろう。

 問題は、今後の彼のクラブでのプレー内容だ。あれだけ公然と移籍を志願したせいで、当然のことながら、クラブとチームにおける彼の立場は著しく悪化している。2年前に「救世主」として大歓迎されたときとは、ほぼ真逆の状況だ。今後、プレー内容が悪ければ、地元メディア、サポーターからこれまで以上に厳しい批判を受けるのは間違いない。

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