ネイマールに襲いかかる逆風。パリ市民との関係修復は可能なのか? (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 にもかかわらず、ネイマールがメディアやサポーターから愛されないのは、ピッチ外での子どもじみた振る舞いや、わがままな行動に多くの原因がある。

 今回の移籍騒動がネイマール本人の希望に始まったことが報道された時、意外にも周囲の反応は冷たかった。そこからは、「去る者は追わず」というよりも、「わがままなスターに振り回されるのはもう御免」という本音が透けて見えた。

 実際、本拠地パルク・デ・プランスで行なわれたリーグ開幕戦では、スタンドにもいないネイマールを罵るチャントがスタジアムに響き、「ネイマールは出て行け!」と書かれたバナーも掲げられた。

 愛するクラブを軽く見るかのような自分本位の言動を続けるスター選手に対し、もうとっくに堪忍袋の緒が切れているゴール裏サポーターとネイマールの関係は、もはや修復不可能なレベルにある。

 おそらく、トーマス・トゥヘル監督やチームメイトは残留を歓迎してくれるだろうが、憎悪に満ちたサポーターたちはそうはいかないだろう。大ブーイングでネイマールを迎えることは必至で、ネイマールもそれを覚悟のうえでピッチに立たなければならない。

 そんな状況のなか、果たしてネイマールは何のために戦うのか――。自分のためか、クラブのためか、チームメイトのためか、それともファンのためか?

 本音は別として、少なくともファンのために戦う姿勢を見せ続けることが、関係修復の唯一の解決策になるはずだ。

 そして、クラブ側のネイマールの扱い方も重要になる。

 これまでのような特別待遇を続けるようであれば、ネイマールとファンの関係悪化に拍車がかかる。従って、ネイマールも他の選手と同じであることを強い姿勢で示し続け、ファンがネイマールをサポートしたくなるような環境作りを行なう必要がある。それこそが、クラブのプライドを保ち、下がったイメージを回復する近道となるだろう。

 ネイマール移籍騒動に揺れた8月のPSGは、昨シーズン開幕から見せていた野心が失われ、ただうまい選手たちがプレーしているだけの"志の低いチーム"に成り下がっていた。細かな戦術を突き詰めるサッカーを標榜するトゥヘル監督も、騒動に揺れるなかでチームをコントロールできず、チーム作りを中断させているかのようにも見えた。

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