2019.09.06

SBがゲームを仕切る。戦術変化が
生んだ「10番」ダニ・アウベス

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 GKもビルドアップに組み込まれるようになり、より後方でボールを確保できるようになっていく。この後方の形状変化によって、サイドバックはより高い位置へ押し出された。

 相手のプレッシャーを外しながら後方でパスを回す。そしてボールの「出口」は、ハーフスペースにいる選手になる。そこにいるセンターバック、あるいは下りてきたMFや「偽サイドバック」かもしれないが、いずれにしろ誰かがそこでフリーでボールを保持して、前方への展開をする。

※ハーフスペース=ピッチを縦に5分割したときの、サイドから2番目と4番目。サイドでも中央でもないレーンのスペースのこと。
※偽サイドバック=サイドから中盤へポジションチェンジする選手。

 一方、守備側のサイドハーフは、まずこのボールの出口に立つ選手の前方を塞がなければならない。同時に、自分の横または斜め後方にいるサイドバックも警戒しなければならない。サイドバックがタッチライン際にフリーでいる以上、無闇に「ボールの出口」へプレスすることはできず、かといってサイドバックのマークについて「出口」を開放するわけにもいかない。つまり、1人で2人の相手を見なくてはならない。

 ここで、多くのパスはサイドバックへ集約される。タッチラインを背にフリーで立っていて、守備側のサイドハーフはボールを追って向かっては来るものの、それなりの時間の余裕もある。攻撃側は、SBにボールをつけて、そこからいよいよ崩しにかかるのだ。

 少し前まで、サイドバックに必要な才能はスピードと運動量だった。これは現在でも同じなのだが、加えてプレーメーカーの能力を問われている。縦に走ってクロスボールを蹴るより、中盤で攻撃の起点となる役割にシフトしているからだ。サイドバックはウイングとの兼任ではなく、プレーメーカーとの兼任になりつつある。これは選手の資質に合わせてそうなっているのではなく、フィールドの位置から必然的にそうなっているわけだ。