バルサとブラジル人スターとの愛憎の歴史。ネイマールに固執した理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

「ジンガのリズムに乗ると、自然に体が動き出すのさ」

 かつてインタビューしたとき、ロナウジーニョはそう説明していた。ジンガはブラジルの護身術カポエラの幻惑的なリズムを発祥とすると言われるが、サンバの上半身と下半身が別の生き物のように動く感覚にも似ている。ブラジル人特有のリズムで、体の奥から突き動かされるものだ。

「ジンガは体をスウィングさせることだけど、もっと感覚的なものかな。たとえばドリブルしている時や、動きや方向を変えるフェイントの時とかに自然に出る。音楽に合わせ、どう体を動かすのか、決まっていないのと一緒だよ。自分自身、プレーを決めているわけじゃない。その時の感覚にゆだねているのさ」

 感性でプレーすることによって、その動きは予測できない。その天才的なひらめきが、バルサのオートマチズムとかみ合う瞬間がある。そのとき、想像を超えるショータイムが始まるのだ。

「ロニー(ロナウジーニョ)は底抜けに陽気。カンプ・ノウのファンの熱気をエネルギーにできた。その奔放なプレーでスタジアムも盛り上がって、さらにロニーも乗ってくる。最高の関係性だったよ」

 17歳から25歳までバルサでプレーしたブラジル人、チアゴ・モッタは言っていたが、適切な表現だろう。

 バルセロナという街は、苛烈なサッカーを好む。創造的か、革新的かを問う。勝つだけでは、人々は満足しない。その点、自由で何事にも囚われないブラジル人のきらめきは欠かせなかった。

 もっとも、その野放図さが故か、バルサとブラジル人スター選手の関係の最後は、苦い後味が残る。

 ロマーリオ、ロナウドは在籍2シーズンに及ばず、リバウドは監督との確執で退団した。ロナウジーニョは自堕落な生活が影響して移籍を余儀なくされ、ダニ・アウベスは単純に条件のいいオファーをさっさと選択。ネイマールもアウベスと同じく、「自分が世界一の選手になる」というエゴで、リオネル・メッシのいないチームを選んだ。

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