武藤嘉紀に生まれた一瞬の迷い。現状を変える決定的チャンスを逃す (2ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke
  • photo by AFLO

 FWジョエリントンからのスルーパスに、武藤はDFラインの背後に抜けてフリーに。ドリブルでボールを前方に進めると、背後から北アイルランド代表DFのクレイグ・キャスカートが追いかけてきた。

 武藤はそのままドリブルで、ペナルティエリア内まで侵入。ゴールライン近くまで進み、最終的に角度のない位置からシュートを打った。だが、ボールはサイドネットに逸れた。プレー後、武藤は広告ボードに寄りかかり、悔しそうな表情を見せた。

 この決定的な場面について聞いてみると、武藤は「どうでしたか?」と逆に質問してきた。周囲の状況が正確にわからなかったという。

「パスをもらった時は、『シュートまで行く』と決めていました。(記者:キャスカートがついてきた)。そうですよね。それで、中で(味方が)ついてきてなかったですもんね。(自分で中に)切り返すかどうか、迷ったんです。

 ですが、誰か味方が来るんじゃないかと少し気にしたことと、もう行くしかないという、その両方で(迷った)。それで、あそこまでドリブルで行っちゃった。『ニア下の(GK)足もと、股のところしか狙うところがないな』って。で、シュートが少しずれた。良い形だったけど、もうちょい(ファースト)タッチを真ん中に持っていくべきだったかなあ」

 もうひとつの得点チャンスは、速い弾道のCKが、ゴール前にいた武藤のところに入った、後半39分のシーン。

 武藤がトラップした後、周りの選手に一斉に寄せられて混戦状態になり、シュートを打てなかった。「ゴチャゴチャしてしまった。もう少し(ボールが)当たったところが近かったら決めきれました」と唇を噛んだ。

 さらに、後半アディショナルタイムにも惜しいチャンスがあった。

 右サイドから速い弾道のクロスが入ると、武藤は勢いよく走り込んで思いっきりジャンプしたが、頭がボールに届かなかった。武藤は「今日は決められる気がしていたので、すごく悔しい」と肩を落とした。

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