ダニ・アウベスの帰還にブラジル中が熱狂。主将として「W杯を目指す」 (2ページ目)

  • 沢田啓明●文 text by Sawada Hiroaki
  • photo by Reuters/AFLO

 代表での115試合出場は、カフー(142試合)、ロベルト・カルロス(125試合)に次ぐ歴代3位で、"生けるレジェンド"と呼ぶにふさわしい。過去、クラブと代表で獲得したタイトルは実に40個を数え、これはサッカー史上最多とされる。

 今年6月末、パリ・サンジェルマンとの契約が満了。複数の欧州ビッグクラブから好条件でオファーを受けたが、「子供の頃から好きだった」と語ってサンパウロに入団。サポーターの心を鷲掴みにした。契約期間は2022年末までだ。

 ブラジルの有力選手は、20歳前後で欧州へ渡り、ビッグクラブで10年前後プレーして、欧州で居場所を見つけるのが困難になったキャリアの下り坂で母国へ戻るのが通例だ。しかし、ダニ・アウベスの場合は現役バリバリのブラジル代表で、主将として臨んだコパ・アメリカでは、攻守にすばらしいプレーを披露して優勝の立役者となり、大会MVPも獲得した。

 年齢的には大ベテランとなったが、まだ世界トップクラスの実力を維持している。しかも欧州のビッグクラブから好条件のオファーを受けたにもかかわらず、母国への帰還を選んだ。このような例はブラジルでも極めて珍しい。

 サンパウロは、ほぼ同時期に元スペイン代表の右SBフアンフラン(フアン・フランシスコ・トーレス)も獲得。このため当面、ダニ・アウベスは本来の右SBではなく中盤でプレーする。

 高度なテクニック、優れた状況判断、さらには高い得点能力を備えており、これまでもバルセロナなどで、右SBと右ウイングを掛け持ちする独特のプレースタイルを開拓してきた。サンパウロでは現在、4-3-3のトップ下の位置でプレーしている。

 今後、出身地バイアを含むブラジル北東部をはじめ、サンパウロが遠征する先々で、この男のプレー見たさに観衆が押し寄せるのは間違いない。

 本人は、「2022年W杯出場を目指す」と明言する。9月に予定されている代表の強化試合2連戦にも招集され、キャプテンとしてチームを牽引するはずだ。彼が来年3月に始まるカタールW杯南米予選でどのようなプレーを見せるのか、そして2022年の本大会に39歳6カ月で出場し、セレソンを世界の頂点に導くことができるのか。

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