柴崎デポル、岡崎マラガ、
香川サラゴサの1部昇格の可能性は?

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Quality Sport Images/AFLO

 とは言え、カタールの王族であるアル・タニ会長の放漫経営には非難の声も強い。選手の高額サラリーを理由に、岡崎のリーグ登録も危ぶまれ、セネガル代表MFアルフレッド・エンデアイエの売却交渉を進めるなど、実は経営状況はギリギリ。ファンの不信感は増す一方で、存立の危機と隣り合わせだ。

 一方、香川が飛び込んだレアル・サラゴサは、昇格争いではダークホース的な存在か。

 昨シーズン、サラゴサは15位に低迷し、2部B(実質3部)への降格回避争いに巻き込まれている。単純に資金力=戦力の差が露呈した。年間予算はわずか400万ユーロ(約5億円)と、平均にも遠く及ばない。2010年前後に1億ユーロ(約120億円)とも言われる負債の存在が発覚し、法的整理を受け、予算は最低限のものになっているのだ。

 もっとも、かつて欧州カップ戦を制した伝統あるチームだけに、強者の気風は残っている。ロマレダスタジアムは約3万5000人収容で2部最大級だし、2万5000人近いソシオ(チーム会員)は1部のクラブと比較しても遜色ない。そしてクラブの黄金時代を作ったビクトル・フェルナンデス監督も戻ってきた。

「香川がエベルトンの足跡をたどる!」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』も、そんな表現で、欧州の第一線で戦ってきた香川に希望を託している。2008-09シーズン、香川と同じようにドルトムントからやって来たブラジル人FWエベルトンは、リーグ得点ランク2位の28ゴールを叩き出し、1部昇格の原動力になった。この時に昇格し、2013年に降格して以来、チームは2部でのプレーを強いられている。

 香川の加入以来、サラゴサのソシオの数は急速に増えたという。

 3チームの1部昇格のライバルは、降格組のジローナ、ウエスカ、そしてラージョ・バジェカーノだろう。ラージョは開幕1週間前までプレシーズンマッチを1試合も勝てていない体たらくだが、主力を引き留めることに成功し、戦力は充実している。パコ・ヘメス監督は「スモールクラブでバルセロナのような戦い方をする」と言われる戦術家で、その采配は必見だ。

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