ネイマールの居場所がない。「パリ脱出」を困難にする思惑の数々 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 おそらくヨーロッパには本気でネイマールをほしいというチームは存在しないだろう。信じられないことだが、それが現実だ。レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長は、ずっとネイマールを獲得することを夢見ていた。しかし、ジネディーヌ・ジダンもレアルのサポーターも、ネイマールの加入を歓迎しないという意志をはっきり打ち出している。

 そこで浮かんできたのがユベントスだ。クリスティアーノ・ロナウドはネイマールのことを評価している。しかし、ユベントスで決定権を持つのは彼ではない。レアルのようにはいかない。ネイマールの父親がユベントスの幹部と話をしたようだが、可能性は10%に満たないだろう。

 それでは誰が? やはり可能性があるのはバルセロナしかない。バルセロナの王様、メッシはネイマールを自分の脇に置きたい。昨シーズン、ひどかったチャンピオンズリーグを経験し、メッシはネイマールのスピードと創造性をあらためて評価したのだ。ダニ・アウベスと彼がいてくれれば、メッシの好きなプレーができる。

 しかし、ここでネイマールにとってネガティブな一手が打たれた。唯一ネイマールにとって有効な駒だったダニ・アウベスが消えてしまったのだ。彼はブラジルのサンパウロと契約を結び、ネイマールとバルセロナに戻るプランは消えてなくなった。これから先、ネイマールはひとりで移籍ゲームをしなければならなくなった。

 しかもネイマールの価値は大暴落中だ。

 スイスにあるCIES(国際スポーツ研究センター)の調査によると、今年3月時点でのネイマールの価値は1億8000万ユーロ(約216億円)だった。サッカー選手はいいプレーをしてなんぼだ。しかしネイマールは、ここ2年連続してFIFAの年間最優秀選手のトップ10にも入っていない。今年の5月にはキャリア3度目となる大きなケガをし、リーグアンの終盤戦も、チャンピオンズリーグも、コパ・アメリカもプレーすることができなかった。

 7月に、新たにCIESがネイマールのパスの金額を試算したところ、その値段は1億4000万ユーロ(約168億円)にまで落ちていた。年末にはさらに下がってしまうという予想もある。しかしPSGはその金額では放出することはできない。もしネイマールがパリを出ていくなら、彼の獲得にかかった2億2200万ユーロからビタ一文まけたくない。もしそれより安く売ったとなれば、自分たちに先見の明がなかったことを世界的に宣伝してしまうことになるからだ。だが、そんな額を払えるチームは世界でも数少ない。

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