ネイマールの居場所がない。「パリ脱出」を困難にする思惑の数々 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 PSGの監督トーマス・トゥヘルは「ネイマールは私の選手で、私は彼を大いに買っている」とコメントして周囲を驚かせたが、そこにネイマールにはあまり有利ではない駒が登場する。元鹿島アントラーズのレオナルドだ。PSGのスポーツディレクターに就任し、クラブを動かしている。レオナルドとネイマールは数日前に直接、話し合った。

「僕はPSGを出ていきたい。僕のことを移籍市場に出してほしい」

 ネイマールは言った。しかしレオナルドは落ち着いた様子で、礼儀正しくもこう答えた。

「様子を見てみよう。ただ、いまのところ君がほしいというオファーはひとつも来ていない」

 オファーがない限りは、ネイマールがパリを出ていくことはないだろう。今のところネイマールは日々PSGで練習をしている。彼がパリに戻ることは絶対にないだろうと誰もが言っていたのに、だ。ただし、ネイマールはまだ一度も試合には出ていない。プレシーズンの中国ツアーでもプレーしていない。

 ネイマールを守る唯一の駒、ビショップのような存在はダニ・アウベスだった。元バルセロナ、ユベントス、PSGの選手であり、コパ・アメリカの最優秀選手だ。彼はPSGを退団後、まだ行先が決まっていなかった。ヨーロッパの半分のチームがほしがったが、彼がヨーロッパで移籍したいチームは唯一、バルセロナだけだ。それもネイマールと一緒に。

 スペインの裁判所は脱税の疑いでネイマールと彼の父親を取り調べているが、その一方で、ネイマールの父親もスペインの裁判所にバルセロナを提訴している。2500万ユーロのボーナスが未払いだと言うのだ。しかしバルセロナは絶対にこの求めには応じないだろう。ネイマールの父はすでに正式にバルセロナからの文章を受け取っている。「もしネイマールがバルセロナに戻りたいのであれば、速やかにこの請求を棄却せよ」というものだ。

 ネイマールにとって厳しい日々が続く。ブラジルは彼がいなくともコパ・アメリカで優勝した。PSGとそのサポーターは彼を快く思っていない。バルセロナは、まだ契約期間を残しながらも電撃移籍した裏切りを忘れてはいない。

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