ネイマールの居場所がない。「パリ脱出」を困難にする思惑の数々

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳translation by Tonegawa Akiko

 ネイマールはかなり以前から、パリ・サンジェルマン(PSG)を去りたいと願っていた。しかし、さまざまな思惑が交錯し、なかなか実現しない。

 PSG、バルセロナ、2億2200万ユーロ(当時のレートで約291億円)、サミュエル・ウムティティ、フィリペ・コウチーニョ、アントワーヌ・グリーズマン、ダニ・アウベス、バルセロナの裁判所、リオネル・メッシ、シェイク・アル・ヘライフィ、レオナルド。一見何の脈絡もないこれらの事柄は、実はすべてネイマールの運命を決めるチェスの駒だ。それぞれがどのように動くかで、ネイマールの将来が変わってくる。

 フランススーパー杯の表彰式に登場したネイマール photo by AP/AFLO フランススーパー杯の表彰式に登場したネイマール photo by AP/AFLO 8月16日、リバプールで、ヨーロッパ各国のクラブチームの会長が一堂に会する会議が行なわれる。その中にはもちろん、バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長とPSGのナーセル・アル・ヘライフィ会長もいる。彼らが顔を合わせれば、必ずネイマールの話となるだろう。

 PSGはバルセロナのウムティティに興味を示しており、ネイマールとのトレード話が出ている。もちろん等価ではないので、条件はウムティティ+コウチーニョ+1億4000万ユーロ(約168億円)とネイマールの交換だ。コウチーニョはバルセロナであまり愛されてはいない。新天地を求めれば、かつてプレミアで見せたような、人々を魅了するプレーを取り戻すことができるかもしれない。こうしてコウチーニョも、ネイマールのチェスの駒のひとつとなった。

 だが、実のところバルサにはもうそれほど資金がない。グリーズマンをアトレティコ・マドリードから獲得するのにも、銀行に資金援助を頼まねばならなかった。ご存知のようにグリーズマンはアタッカーだ。そしてネイマールもまたアタッカーだ。すでにグリーズマンがいるうえ、お金もない。なんでネイマールを取る必要がある? そう疑問に思う者は少なくないはずだ。こうしてゲームはより複雑となってくる。そしてキングのネイマールを守る駒はボードの上にどんどん少なくなってくる。

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