フローニンゲン板倉滉の「なにくそ」精神。デビュー戦を無失点で飾る (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

「前からいきたい気持ちはありつつも、僕が簡単に裏を取られたら、キーパーが1対1の状況になってしまう。そこは難しいところで、相手との駆け引きもある。87分の場面だけを振り返ると、相手の縦パスが弱かったので、『これはいける』と判断して前に出た結果、ボールを奪えました。(ゴールに結びついた点については)僕が奪ったボールをうまく入れてくれたので、チームメイトに感謝したいと思っています」

 開幕戦での抜擢について、記者のひとりから「コパ・アメリカやプレシーズンのパフォーマンスが評価されたのか?」という質問が飛んだ。すると板倉は、「去年の積み重ね、というのはあります」とキッパリと答えた。

「昨季の半年間、とにかく試合に出してもらえなかったので、『なにくそ』という気持ちで練習しました。シーズンの最後のほうになると、少しずつ試合の合間で『アップしてこい』と言われて、アップの時間が増えたりした。それでも、最後の一歩のところで試合に出してくれない、という経験をした。だから、とにかくプレシーズンでアピールして、開幕スタメンを獲ることを意識していました」

「『アップしてこい』と言われてアップの時間が増えた」ことが、どうしてモチベーションにつながったのだろうか?

「日本では(控えの選手が)まとまって『アップに行け』と言われるんですが、こっちの監督は出す気のない選手に『アップしろ』とは言わないんです。フローニンゲンに来たばかりの頃は、一歩もアップせずに寒いなかでベンチに座っていただけでした。

 それがシーズン終盤になって、『アップしろ』と言われることが増えていった。こっちは使う気があるのか、ないのかがハッキリしているので、少しずつチャンスが来ているなと。ただ、『もうひと踏ん張りしないと、試合には出られないな』という感覚があったので、プレシーズンは常に集中してプレーしました」

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