フローニンゲン板倉滉の「なにくそ」精神。
デビュー戦を無失点で飾る

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 フローニンゲンのゴールを守るGKセルジオ・パットから見れば、板倉のプレーが無難にいき過ぎている印象もあったのかもしれない。終盤になって左SBへのパスを繰り返す板倉に対し、パットは大きくゴールエリアから飛び出して檄を飛ばした。

 するとその直後の87分、果敢に前に出た板倉は相手のボールをインターセプト。そして左サイドの深い位置までボールをドリブルで運び、中央のMFラモン・パスカル・ルンドクヴィストにパスを出すと、ルンドクヴィストのラストパスを受けたMFアイディン・フルスティッチがGKをかわして決勝ゴールを決めた。

「この日のピッチで最高の選手です!」

 板倉のプレアシストに、オランダのテレビ実況は絶叫した。

 試合後、開幕戦に先発した気持ちを聞かれた板倉は、不遇だった時期の思いを口にした。

「うれしいという気持ちより、『ここでやらなきゃ、この前の半年間と同じことの繰り返しになる』という気持ちでした。『ここでやらないと、次はないぞ』という気持ちで試合に臨みました。

 開幕までのプレシーズンマッチで、監督やマイク(テ・ウィーリク)からいろんなことを言われてきたことを修正しつつやってきた。まだ直さないといけない点は、この試合でもたくさん見つかりました。ただ、少しずつ克服してきた結果、今日の試合を失点ゼロで抑えられたのかなと思います」

 デニー・バイス監督やテ・ウィーリクから「いろいろ言われてきたこと」とは、いったい何だろうか。

「今日の試合で言うと......いや、今日の試合だけでなく、いつもそうなんですが、もっともっとポジション取りを早くしないといけないと感じています。自分とマイクの距離、自分とサイドバックの距離......そういうところの指示を細かく出されます。その距離を意識しつつ、前からボールを取りにいくのがフローニンゲンのスタイルだと思います」

 前からボールを取りにいくのがフローニンゲン――。そのプレーを具現化したのが、87分のインターセプトからのドリブルだったのかもしれない。

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