乾貴士が「我が家」エイバルに復帰。兄貴に戻れるのは高い評価の証だ (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Pressinphoto/AFLO

 アジアカップ後に合流したアラベスでは第23節から最終第38節までの16試合中、10試合に先発。うち2試合でフル出場を果たし、ベティス時代に比べると出場機会は増えた。ただし、第36節以降は負傷で離脱していた。

 今季を迎えるにあたって、いったんレンタル元のベティスに戻ったが、ここでは居場所を得られないだろうと読んだのだろう。古巣への移籍を決断した。

 乾にとってエイバルは、欧州に渡って「初めて楽しくサッカーをした」場所だった。ドイツのボーフムでもフランクフルトでも、満足感は得られなかった。「俺は、ヨーロッパじゃなくてスペインに行きたいの」と言い続け、実際に結果を出したのがエイバルだった。

「スペインにいたら、1年に何回かはバルサ、レアルと試合ができるんですよ。チャンピオンズリーグとかを求める必要ないでしょう」と、独特の表現でスペインにいることのメリットを語ってもいた。

 エイバルでの乾は、主として左MFのポジションで、チャンスの創出だけでなく、献身的な守備も見せた。若い選手が多いチームのなかにあって、兄貴的な存在のようだった。外から見ていて、明らかにその態度はドイツ時代とは違っていた。味方のミスに苛立つことはなく、思うようなプレーができなかった自分にふてくされることもない。とにかく楽しみながらプレーしていることだけが伝わってきた。

「ドイツでは結構、練習で喧嘩とかもあったけど、エイバルはみんな仲がいい。監督もいいし、それにみんな、テクニックがあるんです」

 結果的にその充実したエイバルでの3年間が、ロシアW杯での活躍と、日本の決勝トーナメント進出につながったと言っても過言ではない。

 ベティスという、エイバルから見れば格上のビッグクラブで活躍することはできなかったかもしれないが、再び迎え入れてくれるクラブがあるというのは、それ自体、高い評価の証である。

 期待と信頼に応えるシーズンを目指して、乾は奮起するにちがいない。日本人選手として歴代最多出場を続けるスペインでの戦いは終わらない。

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