「イニエスタの後継者」は19歳。バルサの申し子・背番号8を見逃すな (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松尾/アフロスポーツ●写真 photo by Matsuo/AFLO SPORTS

 プッチがバルサの下部組織に入団したのは2013年、13歳の時だった。才能が認められたものの、サイズが小さかったため、当初は「所属チームとバルサを年ごとに行ったり来たりをして成長を確かめる」という条件付きだったという。しかし、プロ選手として活躍した経験のある父は、バルサ関係者に1週間のトライアルを持ち掛けた。そこで関係者が実力と将来性を認めた。「モノが違う」という結論で、完全な移籍が決まった。

 下部組織であるラ・マシアの祖ともいえるヨハン・クライフは、こう言い残している。

「体が小さいことで切り捨てず、むしろ小さい選手に目をかけるべきだろう。幼いころに小さくても活躍できている選手は、大きな相手をしのぐ何かを持っている。成人し、大人になった時も、(フィジカルで同年代の選手に勝っているわけではないので)遜色のない技術を出せる」

 その点、プッチはバルサの申し子と言える。他にもバルサを支えてきた選手には、シャビ・エルナンデス、イニエスタ、リオネル・メッシなど小柄な選手が多く、身体的に屈強とは言えない。しかし彼らはボールを持ったとき、最強を極める。冒頭の「MAGO」ではないが、一瞬で局面を変え、周りの選手にアドバンテージを与える"魔法"を使えるからだ。

 プッチは昨シーズン、トップチームでリーグ戦2試合に出場した。着実にステップを踏み、チェルシー戦では先発を果たした。しかし、ポジション定着はまだ遠い。現時点ではインサイドハーフのポジション争いで、クロアチア代表イバン・ラキティッチ、ブラジル代表アルトゥール、オランダ代表フレンキー・デ・ヨング、チリ代表アルトゥーロ・ビダル、スペイン代表セルジ・ロベルトらの後塵を拝している。

 エルネスト・バルベルデ監督が選手にプレー強度を求め、カウンタースタイルを強めていることで、プッチのようなボールプレーヤーは厳しい立場にあるのだ。

 しかしながら、バルサがバルサらしくあるためには、プッチのような人材が欠かせない。バルサが他のビッグクラブと一線を画してきたのは、その独特のプレースタイルにある。ラ・マシアからの一貫した教育で、とことんボールを持ち、それを利点に攻め続ける。プレーにオートマチズムを仕込み、そのなかで傑出した選手を輩出する。異端とも言えるカラーで、世界唯一のクラブになったのだ。

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