ブラジル復活のコパ・アメリカ総括。
やっぱり南米は超過酷だった

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 コパ・アメリカ2019が開幕した6月14日、モルンビー・スタジアム(サンパウロ)は地元ブラジルの登場にもかかわらず、空席が目立っていた。

 スコアー上は3-0という快勝を収めたブラジルだったが、パフォーマンスは冴えず、しらけたムードがスタジアムを覆っていた。さらに、続くベネズエラ戦は0-0。VARの際どい判定に泣いたとはいえ、ノーゴールに終わってしまった......。

12年ぶり9度目のコパ・アメリカ制覇を果たしたブラジル代表12年ぶり9度目のコパ・アメリカ制覇を果たしたブラジル代表 不振と不安に包まれた開幕から、まだ1カ月も経ってない。しかし7月7日の決勝戦、超満員のマラカナン・スタジアム(リオデジャネイロ)のピッチに立ったブラジルは、南米王者にふさわしい風格があった。そして、彼らは3-1でペルーを下し、12年ぶり9度目の優勝を飾った。

 勝負の分かれ目は、前半終了直前に2-1とした勝ち越しゴールだろう。44分、パオロ・ゲレーロ(インテルナシオナル)のPKでペルーに1-1に追いつかれてしまったが、その3分後のゴールで嫌な空気を見事に断ち切った。

 このゴールは、ロベルト・フィルミーノ(リバプール)→アルトゥール(バルセロナ)とつなぎ、最後にガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)が決めたものだった。

 とくに、スライディングタックルでペルーボールを奪ったフィルミーノのファインプレーが光っていた。ストライカーを務めるフィルミーノのみならず、エベルトン(グレミオ)やジェズスなどアタッカー陣の攻守にわたる献身が、今のブラジルを下支えしている。

 ただ、残念ながらジェズスは、その守備のがんばりが仇(あだ)となって、70分にこの日2枚目のイエローカードをもらって退場となってしまった。

 ジェズスが退場したタイミングは、ちょうどペルーが攻勢を強めた時間帯だった。だが、ブラジルは数的不利になったことで、割り切って退陣し、守備に徹することができた。その結果、ペルーにチャンスを与えることなく、終了間際にシャルリソン(エバートン)のPKでダメ押しの3点目。ただ、3-1にならなくても、ブラジルが逃げ切っていた可能性は高い。

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