2019.07.05

「逆境に強い」ペルーがチリも零封。
守護神が散々な出来から覚醒した

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 それでも、後半アディショナルタイムにガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)のPKを見事に止めたことで、マインドリセットができたのだろう。準々決勝ではウルグアイを零封し、PK戦ではルイス・スアレス(バルセロナ)のシュートを鮮やかにストップし、ベスト4進出の立役者となった。ジェズスのPKストップから生まれたいい流れはチリ戦でも続き、ブラジル戦とは別人のような堅い守備を見せた。

 また、ペルーのフィールドプレーヤーたちも健闘した。SBルイス・アドビンクラ(ラージョ・バジェカーノ)とウイングのカリージョは、右サイドでダイナミックゾーンを作った。逆サイドではSBミゲル・トラウコ(フラメンゴ)とサイドハーフのフローレスが、ボールの落ち着きどころを作った。

 そして中央では、1トップのパオロ・ゲレーロ(インテルナシオナル)の周りをトップ下のクエバが衛星のように動き回り、チリの守備網を撹乱した。今大会で一番いい動きを見せたクエバは守備でも健闘し、ボールホルダーの懐(ふところ)に入ってボールを突っつき、ボールを奪ったりミスを誘ったりした。

 89分、チリはCBギジェルモ・マリパン(アラベス)を下げ、FWのニコラス・カスティージョ(クラブ・アメリカ)を入れてきた。その結果、ピッチ全体にスペースが生まれ、「オーレ! オーレ!」の歓声のなか、ペルーはボールを回して時間潰しを始めた。

 そしてアディショナルタイム、ペルーはゆったりとしたパス回しからボランチのレナト・タピア(ヴィレム)が突然ギアを上げて鋭いスルーパスを放ち、ゲレーロと相手GKが1対1になるシチュエーションを作り出す。百戦錬磨のゲレーロは落ち着いてGKをかわし、3-0として勝負を決めた。

 2015年のコパ・アメリカ開催中、チリの新聞で、「ペルー人はゴールさえなければ世界一うまい」と書いてあるのを読んだ。世界一はさすがに言いすぎかと思うが、たしかにペルーの選手たちの技術の高さには、昔からうならされる。昨年10月に続いて「太平洋クラシコ」を制したペルーは、とうとう44年ぶりにコパ・アメリカ決勝に進出する。アンデスの赤襷(あかだすき)は歴史を記した。

 ブラジル代表より休みが1日少なく、移動距離も長い。完全アウェーのペルーには不利な条件だ。それでも、ペルーのプレーを見ていると、「すべてが可能だ」という気持ちが湧いてくる。

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