2019.07.04

サッカーの「日常風景」になったVAR。露呈した弱点と今後の課題は

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倉敷 「どこまで正確にやりますか?」という話ですね。フリーキックのときに3人以上の壁を作った場合、攻撃側チームの選手は壁から1メートル以上離れなければいけないことになりましたが、その距離についても90センチか110センチだったのか? ここはあやふやなままなのですが、でも、ゴールに直結したらどうしましょう? VARは発動するでしょうか。

 またGKはPKの時にはどちらかの足がラインに触れていなければいけないというルールはどうでしょう? これまで以上にGKはギリギリの駆け引きに出るでしょうが、テクノロジーを使って数ミリ単位での解析をするのでしょうか? 変化しやすいボールの登場、ルール変更などGK受難の時代はまだ続きますね。

中山 しかも、どちらかの足がライン上にない場合は、イエローカードの対象になってしまいました。個人的には、あれは厳しすぎると思います。以前は両足をラインに触れた状態にしておくというルールだったので、片方の足だけになったのでGKにとっては有利なルール変更なのかもしれませんが、それは建前上の話で、そもそも以前はそこまで厳格にチェックしていなかったわけで、それをVARでチェックするなんて、GKからすれば勘弁してくれという話です。

倉敷 残念ですがサッカーはVARと相性が悪い。そう主張する根拠は、セットプレーの少ない競技であるという点です。相撲は1回ごとのセットプレー。テニスも野球も一球ごとのプレー、ラグビーにしてもセットプレーの連続ですから、VARを受け入れやすい。しかしサッカーはどこからどこまでがワンプレーなのかが極めて曖昧なスポーツで、それが面白さでもあるわけです。

 レフェリーがプレーを止めるか、ボールがラインを割ってデッドにならない限り、セットプレーは発生しません。しかし、得点を認めるか否かのVARは極端なケースでは2分近く検証することもあり得る。観客はどこに問題があったのかわからず、置いてけぼりです。ゴールのカタルシスを奪う可能性がある現在のプアな技術のままではVARはサッカーにはマッチしないというのが、個人としての意見です。

小澤 VARを導入したことによって、逆に疑問が生まれてしまうケースもありますしね。たとえば女子W杯のフランス対ノルウェー、南アフリカ対スペインの試合では、自陣ペナルティエリア内でボールを奪おうとした、または蹴ろうとした選手の残り足が相手に当たってしまってPKを取られてしまうということがありました。足が当たったあとにファールされた側の選手もチームも次のプレーに移っているにもかかわらず、プレーを遡ってVAR判定によってPKが与えられてしまうのも、どうかと思います。

 先ほど触れたように、たしかにその瞬間だけの映像を見たら足裏が入ってはいますけど、プレーの流れとして見た場合、ボールを蹴った後の残り足に相手が突っ込んできているように見えるわけで、実際、PKの判定を得たフランス、スペインの選手もベンチもその直後に「PKだ」と主張していませんでした。VARがなければ誰もが何の疑問もなく流していたシーンですから、今後はこういう判定、解釈が増えてボックス内でPK獲得合戦が行なわれるかもしれません。