スペイン、ドイツの凋落なんてありえない。育成・強化の充実は抜群だ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 もちろん、どちらにも一長一短がある。身もふたもない言い方をすれば、どちらもできるに越したことはない。

 ただ、ひとつ言えるのは、ボールを保持してゲームを進めることを前提にしていないチーム、あるいは選手では、安定した強さを発揮するのが難しいということだ。

 今大会を見ていても、スペインやドイツが、カウンターから得点することは、当然あった。彼らはポゼッションだけにこだわっているわけではない。

 だがその一方で、ボールを保持した状態から有効な攻撃を生み出すことにかけては、このふたつのチームが抜けていたのも、また事実である。準決勝ではともに相手にリードを許す展開になりながら、試合をひっくり返すことができたのは何よりの証拠だ。

 準決勝でドイツに敗れたルーマニアを例に引くとよくわかる。今大会でベスト4へ躍進し、東京五輪の出場権を獲得したルーマニアは、優れたタレントを擁する魅力的なチームだった。精度の高いロングボールと、タイミングのいい飛び出しを組み合わせたサッカーは、非常に展開がダイナミックで見応えがあった。

 だが、ボールを保持して試合を進めるという点において、ルーマニアはドイツに見劣った。ルーマニアを率いたミレル・ラドイ監督は準決勝後、「フィジカル面でドイツと同じレベルにはなかった」と話していたが、試合終盤に足が止まったのは、ゲームの進め方にも原因があったからではないだろうか。

 対戦相手の特長次第で、カウンター主体の戦い方になることもあるだろう。だが、チーム作りや選手育成の前提として、ボールを持って試合を進めることの準備ができていないチームは、いずれどこかで頭打ちになる。

 スペイン、ドイツの強さは、そんなことを示唆しているように感じられた。

 昨年のワールドカップでは、いずれも優勝候補と目されながら、ドイツはグループリーグで姿を消し、スペインは決勝トーナメント1回戦で敗退。彼らの時代は終わったとばかりに、両国には否定的な視線が向けられた。

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